・・・ 二日ばかりかかって書類に一段落つくと、中川は、「ところで、愈々将来の決心だが……」と、睨むように私を眺め、万年筆をおいて煙草に火をつけた。「帰れるか、帰れないかがきまるところだから、よく考えて答えたまえ!」 夜七時・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・これはまるで、五年間の家庭生活に、はたきを掛けたり、拭いたり、お掃除をしているようなもので、これが済んだら、気持の上にも一段落ついてきっと何か新らしいところへ出られるだろうと思っています。まだはっきりした形をとらない未知のものに対して、楽し・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
・・・という種類の言葉が、よかれあしかれ、何かの実感をもってうけとられるのは、今日若い命の力ばかりをたよりに歴史の曲折をしのいでいるような若い人々からみれば、もう一時代前、つまりその人たちの父母たちの時代で一段落つげているように思われる。きょうと・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・ 今はそれでいいとし、然し五ヵ年計画が終って、いろんな仕事が一段落ついたら、丁度東京の新興事業が終ったと同時に失業者がましたように、ソヴェト同盟にも亦、うんとあぶれものが出来るんじゃないか? その心配は、ソヴェト同盟では不用だ。ソヴ・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・そして、重吉の仕事が一段落ついたとき、「こういうものが出たわ」 その封筒を見せた。 裏をかえしてみて、重吉は、「文学報国会とあるじゃないか、何だい」と云った。「なかを見てよ」「その日の雪」という題と名だけはひろ子・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・また、組合活動の中心課題がストライキは一段落だから今度は文化活動へという考え方で成り立つものでもありません。わたしたちは、人間らしくこの人生を愛するからこそ自然に職場で活溌に働くようになるのだし、その経験から革命的にもなるのです。自分にぴっ・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫