・・・ ケーテが、ベルリンの自由劇場に上演されたハウプトマンの「織匠」を観たのは一八九三年二月のことであった。当時ドイツは、近代資本主義の国家として生産上の立おくれを急速にとり返そうとする貪慾な資本家、地主に対して、労働者の組織とその運動とが・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 健全な演劇というものは、特定の観念をテーマとした台本を上演するということだけで決して解決しない。わかり切っているこんなことが、しかし、案外の困難にぶつかっているのではないかしら。 ラジオなどできく落語が、近頃は妙なものになって・・・ 宮本百合子 「“健全性”の難しさ」
・・・が五十日間上演されて、東宝の財政をうるおした。 興味深いものは、私たちが今日面している人間性解放の現実的諸要素の構成と、ルネッサンス芸術家としてのシェクスピアの世界での人間解放とが、どのようにたがいに似ていて、しかも絶対に異った歴史の内・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ ですから、ノラの芝居が――せんだって私も見にまいったのですが――上演されました意味は、未来に向って、課題を与えるというより、われわれが、今日いろいろの現実の問題を解決して行かなければならない幸福の鍵を――ノラは何も持たずに家を飛び出し・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・演劇は上演目録の計画的選定で上演されている。文学作品の生産ばかりは、個々の作家の勝手で行われて来た。めいめいの作家が、てんでの思いつきでつかまえた題材で書きたいときに書いていた。果して、それでいいものかどうか? ラップはこういう問題を提起し・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・いつになったら書けるか、今、ゴーリキイをやっていて、九月初旬本になり、築地の記念上演と同時に出るでしょう。それから腰を据えて小説を書いて、それからこの三老人にとりかかるのだから。私はこの間うちの経験で本をよむ術というか、本から必要なところを・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・それだのに、どうして、芸術座はアンナ・カレーニナを上演し、名優タラーソヴァの演技は、世界の観客をうつのだろう。タラーソヴァと芸術座の演出者は、こんにち地球にのこっている資本主義の社会の上流で、アンナ・カレーニナの悲劇が生きられていることを歴・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・むかし築地小劇場がたくみな模倣でゴーゴリの検察官を上演した。あの劇中でも金のないフレスタコフのあなぐら部屋へ靴の裏みたいなあぶり肉をそれでも給仕が運んで来たじゃあないか。あの通りだった。一杯十カペイキの茶でも呼鈴。―― 朝八時と十時の間・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・を上演しているので、余計に心を引かれる。さぞよいだろう。 つい間近に成った民衆座の同じものが、かなりよく出来たというのは悦しい。 Romain Rolland の近作“Colas Breugnon”が出版された。 此は、戦争・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・エム・オー・エス・ペー・エス劇場がどんなによい上演目録をもってたとしてもそうちょいちょいは行けないではないか。ソヴェトには少くとも一時に五千人から一万人入れる劇場が必要だ。我々はアメリカの抜目ない興行主のやり口をソヴェト式に転用しなければな・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
出典:青空文庫