十篇の応募作品をよんだ。出来・不出来はあるにしろ、そのどれもを貫いて流れているのは、日本の結核療養に必要な社会施設のとぼしさと、そこからおこる闘病の苦しく複雑な現実の思いである。ベティー・マクドナルドというアメリカの婦人作・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・そうした見方から、あの憲法草案を見ますと、いままでの日本の憲法というものは御承知の通り、まことに不出来なものでありまして、あれは憲法ではない、ある一つの文章です。それで、はじめてこんど、憲法らしい形で、憲法が出来たわけでありますが、人は総て・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・出来、不出来は当人には今のところ不明です。一生懸命にとにかく体当りでやったから却ってそんな風なのでしょう。重吉という男の細君のひろ子という女の活動の間での心持を主として描いたのです。一昨年の秋百枚近く書いてあった、あれをすっかり書き直し、い・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 一つ一つの作品については、それぞれ異った印象があるし、おのずから出来、不出来がある。しかし、七篇をとおして流れている云うに云えない生真面目な、本気な、沈潜した作者たちの創作の情熱は、少くとも日本の、浅い文学の根が、ジャーナリズムの奔流・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・もちろんそれぞれの作品には、出来、不出来もあり、むらもあるけれども、それらを一貫して明瞭な階級性があるから、度重る検挙投獄と執筆禁止を蒙ったと思います。戦前の作「乳房」は、ソヴェト世界革命文学の集に翻訳され、戦後の「播州平野」は、ソヴェトの・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・彼らはまた穀類の出来不出来の評判を尋ね合っている。気候が青物には申し分ないが、小麦には少し湿っているとの事。 この時突然、店の庭先で太鼓がとどろいた、とんと物にかまわぬ人のほかは大方、跳り立って、戸口や窓のところに駆けて出た、口の中をも・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫