・・・ 文化に対する理解がそこにあるとされているが、そういう国では現在青年群に与える読みものとしてそういう古典を整頓しているほか、その青年たちが成人したときその世代の文化的創造力を溌溂旺盛ならしめるために、どんな独創の可能を培いつつあるのだろ・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・まして、歴史は決してそのままのくりかえしでない、という事実をはっきり知り、あなたがたの愛人たちの頭の上にチョン髷はないのだという事実をしっかりつかんだとき、若い世代が歴史そのものを発展させてゆく能力は非常に大きく発揮されます。 皆さまも・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・という小説に書いた時代からすすんで、こんにちではどこの国でも、一九二〇年代の終りから三〇年代にかけての日本にみられたような、世代の分裂、親と子の離反としてだけに止っていない。親と子、世代と世代とが、マルクシズムに対する観念上の対立というよう・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・彼の芸術が日本の文芸史のなかにあれほど巨大な場所を占めているのを見れば、近松の情の世界が、日本の社会の歴史のなかではいかに長い世代にわたって一般の感情に共感をよびさますものであったかがうかがわれる。その封建時代の女心が男女にこぼさせた涙が今・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・だけれども、ほんとにまじりけない生きているよろこびでピチピチしている子供ら、新しい世代として成長しつつある子供らの新鮮で、こだわりなくて、そしてよその国のどこにもない社会的な保護のもとに小さな人々として生きつつある姿は、わたしを感動させずに・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・何年間も否定されつづけて来た若き生の、肯定と回復の一つの気の如く、不安なつつみどころのない表現として、自然と自意識の問題を語るとき大多数の人は十九世紀より現世代にこの人間課題がどう進展して来ているかさえ見おとした。こういう人間問題について特・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・私たちの世代では、人間一人の生の意味の面からの追究でなければ、死にも触れなくなって来ているところも、フランスと日本の習慣の相異を超えた今日から明日への相似であろうと思う。〔一九三九年十一月〕・・・ 宮本百合子 「生きてゆく姿の感銘」
・・・その貧しさ乏しさは、若い世代の男の子女の子のつき合いについての判断についても良識を欠くことになってたとえば相当な年になった息子たちや娘たちは自分たちの交友を家の外でするという結果をも導き出していると思う。 どんな若いひとたちにしろ、ただ・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・蓊助君は、漫画修行による人生観察の過程で、旧套の重荷に反撥して自らを破ることが、新世代にのしかかる圧力を克服することではないことを、既に学んでいるであろう。昨今の世界情勢の中を行く旅行について父藤村氏の「自由主義的慧眼」に希望している希望に・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・現代の若い世代は、自分とひととの人生にまともに面して、負うている責任の感情を自身にたしかめてみて、そこが肯定されればその誠意を自信のよりどころと思いきわめて生きるほかはないと思う。 女のひとが人生への責任を自分から自分とひととの運命・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
出典:青空文庫