・・・少しあるくと道は突然中断されて、深い掘割が道と直角に丘の胴中を切り抜いていた。向うに見える大きな寺がたぶん総持寺というのだろう。 松林の中に屋根だけ文化式の赤瓦の小さな家の群があった。そこらにおむつが干したりしてあるが、それでもどこかオ・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ もう一つの蓄音機の欠点は、レコードの長さに制限があって長い曲が途中で中断せられる事である。この中絶をなくするために二台の器械を連結してレコードの切れ目で一方から他方へ切りかえる仕掛けがわが国の学者によって発明されたそうであるが、一般の・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・検挙という外部からの理由でなしに中断した唯一の作品である。 いま考えれば、作者によって、あれだけ多量・広汎にソヴェト生活報告は執筆されているときであるから「ナルプ」は、啓蒙的な必要のためには、最もじかにその目的をもって書かれているそれら・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ 中断されたこの時期に、評論集としては、『昼夜随筆』『明日への精神』『文学の進路』などが出版されている。『文学の進路』のほかの二冊の評論集にも、文学についてのものがいくらかずつ収められていた。 この選集第十一巻には、四十二篇の文芸評・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・それを書きあげて、『新潮』へ送ってほとんど間もなく、すっかり仕事が中断されたわけです。府中へは私もひどい風をひいたとき行きそうになって、おやめになったそうです。 私が伺ってあげた読書のプランについてのお考えはいかがですか。少くとも文学に・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ああちゃんが心臓を悪くしているのも全くこの泰子の重さと、やっと眠りかけると、それを中断される不断の疲れだということがわかります。私は泰子に自分の心臓はやりたくないから、だんだん工夫してもっとうまく一緒にねている女中さんに手伝ってもらう方法を・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・徳永さんの御都合で中絶した面もあるでしょうが、ともかくそれは中断されたままになりましたし、だいたい、評論にしろ、どうしても、どっしりと百枚二百枚というものをのせきることができません。薄い一冊の雑誌に、そうとう変化も与え、文学の各方面の話題に・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・日本では、この文芸批評の正当な伝統が戦争によっておそろしく中断されています。戦争中評論について勉強してきた人々は、プロレタリア文学のあるままの歴史さえも手に入れることはできませんでした。手に入るものは、プロレタリア文学運動を何処かでゆがめて・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・熱中して三分の一ほど書いたが、健康がつづかず中断した。一九三二年から四年間、たびたびものの書けない状態におかれたことは、私に啓蒙的な文筆活動を文学的にたかめてゆく機会となった。書けない間、自分の書いたもの人の書いたもの、文学というものな・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・女は白い浴衣で団扇をもち、漁火が遠く彼方にチラチラ燦いているという極めて風情のあるところで、肝心の帳面ぐるみ、小学生作家の空想は明治時代らしいモラリストである母によって中断されてしまったのである。 ずっと後になってから私はその頃のことを・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
出典:青空文庫