・・・しかし、事業の困難さは、耐久力のない胤子を再び失望させたのみか、北海道へ来たことも、良人の生活態度にも、すべてに気をくさらし、同じ感化院の教務主任守屋と不健全な関係に陥る。作者は、この間の消息を精神的によりどころを失った胤子が生活気分のより・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・うなことは、大人に育ってしまってからはよく分らないから、そこに教育部というものがあって、そこへ私が行った時に会ったのは、白髯の爺さんで、かれは何年も児童教育、児童心理学を勉強している人だったが、かれが主任で芝居がすすむにつれ子供がどこへ行っ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・検事一体ということがあって、取調べにあたっての主任検事であった田中検事ほか泉川、平山、富田、木村、屋代、磯山の諸検事は公判廷から姿を消している。 八月一日に検挙された竹内被告が、三鷹の電車暴走を単独行為として自供したのは八月二十日のこと・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・―― そのうちに、私共の組の主任であった先生が来られた。五年の間、自分達は、その、がっしりとした体躯の、色の黒い女教師の下に育てられて来たのだ。大抵の者は、もう人の妻となり、或は親となっていても、彼女の眼を見ると、皆、仲間同士の正直な、・・・ 宮本百合子 「追想」
・・・経営主任の責任ある位置にいるひとはやっと三十そこそこで、その辺にいる誰彼と一向違わない鳶色のルバーシカを着、元気に仕事をやっている。鞄を小脇に抱えた連中が盛に出入りする、青い技師の制帽をかぶったのも来る。主任は日本の女がモスクワから遠い炭坑・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・高等主任に会い、折から居合わせた警視庁の高等係とも掛け合ったが、彼等は何と卑劣でしょう。自分等が一旦法律に従って許可した余興だけさえ、もう許可はとり消したのだといってやらせない。段々夜の部がはじまる午後六時近くなると、会場築地小劇場のまわり・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・推されて一年間その編輯主任となる。「熊谷蓮生坊」「大磯がよい」「女中の病気」「スサノヲの命」。 一九二五年。松竹キネマ製作の映画「坂崎出羽守」は戯曲「坂崎出羽守」の著作権を侵害せる事実明白なるにより、劇作家協会の後援を得て社長大谷氏を訴・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ または格のいい主任級の方でしょうか。 なぜというに、この頃のギリギリと行きつまった世界の不景気時代、タダの会社員だったらいつ会社の都合でクビになるかしれたものでない。クビになったら、又別の口はなかなか見つからず、退職手当と云ったって、・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
・・・リンツマンの檀那と云うのは鞣皮製造所の会計主任で、毎週土曜日には職人にやる給料を持ってここを通るのである。 この檀那に一本お見舞申して、金を捲き上げようと云う料簡で、ツァウォツキイは鉄道の堤の脇にしゃがんでいた。しかしややしばらくしてツ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫