・・・スペイン人民戦線軍に従軍したオーデンは進歩的な作家で、のちには中国の抗日戦にも参加し、「戦線への旅」という作品がある。 スペインの内乱とともにヨーロッパはますます戦争の危険にせまられた。エリカ・マンは、一九三六年、アメリカへゆき、スペイ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・少くともこんにちのまじめな文化人は、一九三〇年代の終りの日本の人民戦線当時の失敗と悲劇とを再びくりかえすまいと、かたく決心しているのです。三年前には、文学における政治の優位性という問題が、政治への嫌悪、権力への屈服の反撥と混同され、その基本・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・こういう有様であったから小松清が、第一回文化擁護国際作家大会の議事録を翻訳紹介して日本にも平和と文化を守る広い人民戦線運動をおこそうとしても、なんのまとまった運動にもならず、舟橋聖一、豊田三郎などの人々によって「能動精神」とか「行動主義の文・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 一九三三年の春、プロレタリア文化団体が壊滅させられた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフランスから紹介されたが、近代の市民生活の歴史をもたず、封建保守の傾きのつよい当時の日本の作家の雰囲気の中には、いつも、こ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・デュガールは、第一次ヨーロッパ大戦を終ったあとのフランスで、ファシズムの文化侵略に対する広汎な人民戦線の結成されたフランスで、主人公ジャックの人間形成のモメントを以前の人々のようにただその人にとっては深い意味をもつ日々の身辺的小事件の累積に・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・反ファシズム人民戦線運動がおこったときも、日本の文化人はその重要さを理解しないで、ファシズムと戦争反対との人民的階級の根拠をまっ殺しました。 森田さんはもう二度と日本にこの悲劇をもたらすまいと思っておいででしょう。その同じ決意において、・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・一九四八年の下半期から四九年にかけて、基本的人権の防衛に関する生活実感の高まりと民族の自立のための統一戦線の必要の実感は、一九三三年以後の人民戦線運動のころよりも、深くひろく、肉体的になっている。それは、アジアにおいての日本が、世界人類に対・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 一九三五年以降のフランスの社会的事情の変遷、人民戦線の拡大等は、文化の上にヒューマニズムの提唱をもたらした。小松清氏等によってヒューマニズムの提唱は日本にも移された。日本に於けるヒューマニズムの紹介は、社会主義的リアリズムがかつて・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ ファシズムにたいしてたたかう民主精神、ヒューマニズムの主張としてフランスを中心におこった人民戦線の運動が、この度の大戦中、どんなに社会的・文学的に高貴な地下活動を行ったかは、今日私たちが少しずつ学びはじめている。同じその時期、日本での・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・それゆえ、一九三八年ごろフランスでナチスの暴虐にたいして人間の理性をまもるために組織されたヒューマニスティックな人民戦線のたたかいも、日本に紹介される時には、大事な闘争の社会史的な核心をぬいて伝えられた。日本の天皇制は、帝国主義の段階にあっ・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
出典:青空文庫