・・・一九二九年の一家総出のヨーロッパ旅行は、父の経済力にとって、又母の体力にとって、超常識な決断であった。父は、母を海外へつれてゆくについて、万一の場合、子供らから離れていては母がさぞ悲しいであろうと、長男夫婦、末娘までを一行に加えた。・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・例えば、余り体力の強壮でない中学の中級生たちが、急に広場に出されて、一定の高さにあげられた民主主義という鉄棒に向って、出来るだけ早くとびついて置かないとまずい、という工合になって、盛にピョンピョンやりはじめたような感じがなくはない。 ジ・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・問題として婦人の解放は憲法と民法の改正だけでは達成しない、彼女たちの一日の時間のどっさりを、とりもなおさず生涯の大部分を費させる台所と育児の仕事がもっと別なやり方でやられなければ、何より基本的な時間と体力で婦人は百年前と同じ一生の使い方をし・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・もう糖尿病になっていたので、下を向いていることは歯齦を充血させて体力が持たなかった。そのほか、後できくと、その絵の師匠は、絵筆をとっている合間に、家をたててくれなどと云い出したので、母は警戒して絵の稽古もやめてしまったのであった。 その・・・ 宮本百合子 「母」
・・・ 五、六時間の席に堪えない習慣で暮している日本の婦人たちの体力や着物の条件についても女として考えさせられるし、議会傍聴というようなことが、女の日常にとって何か特別なことと思われていて、来ている婦人が皆それぞれのつてや背景を脊負っていて、・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫