生産的な場面での女の働きは益々範囲がひろがって来ているし、そこへの需要も急速に高まっているけれども、一応独立した一個の働き手として見られている勤労婦人の毎日の生活の細部についてみれば、それぞれ職場での専門技術上の制約があり・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
・・・ 召使より早く起き日の出ないうちに外囲りを掃いてから、乳搾りやその他のものを起すと云う事は知らぬ者がなく、働き手で通って居る。体も骨太に思い切って大きく眼の大きい眉の太い弟の方は兄より見かけが良い。兄よりは熱のある顔つきをして居るけれ共・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・それでもまだ女の働き手は要求されていて、例えば来年女学校を卒業する娘さんは六千五百名という見込みに対して求人は一万三千という有様である。小学校を出たばかりの少年たちの力も全国的に動員された上でのことである。職業紹介所は更に最近労務資源枯渇の・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・けれども、一つ町内でそういう風に戦時景気に便乗していくらかでも甘い目を見た家の数と、毎日毎日、日の丸をふって働き手を戦争へ送り出し、そのために日々の生計が不安になっていった家の数をくらべて見たらどうだったろう。どんな町でも村でも、目立って景・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ 今度の戦争で夫、兄、弟、息子など身近かな働き手を奪われた後の婦人は農村と都会を問わず食うべき食があろうと無かろうと、一家の口を糊して行く責任を全く負わされているし、男子と共に工場・農村で働く婦人はせいぜい男子の三分の二の賃銀で男子と同・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・国内では工場が閉鎖され、農村で働き手がなくなって、パンが欠乏し、全く窮乏のドン底に陥っているのに、搾取者どもは、猶も愛国主義をふり立てて、労働者農民を大砲毒ガスの餌じきに送ろうとする。働く妻、働く母、働く娘は蹶起してその収奪に抗争したのであ・・・ 宮本百合子 「ロシア革命は婦人を解放した」
・・・これは天照大神が女の酋長であったと同時に、その氏族の中では機も織り、恐らくは野に食物をあさりもした実際の働き手であったことを物語っている。鈿女命の踊りは、氏族に重大な問題が起った時に、後世のような偏見は持たれず、女がその解決のために自由な創・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫