・・・ 二欧洲人の風俗習慣に就て、段々話を聞いて見ると、必ずしも敬服に価すべき良風許りでもない様なるが、さすがに優等民族じゃと羨しく思わるる点も多い、中にも吾々の殊に感嘆に堪えないのは、彼等が多大の興味を以て日常の食事を楽む・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・ 元来志村は自分よりか歳も兄、級も一年上であったが、自分は学力優等というので自分のいる級と志村のいる級とを同時にやるべく校長から特別の処置をせられるので自然志村は自分の競争者となっていた。 然るに全校の人気、校長教員を始め何百の生徒・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・あの方は、小学校を優等でお出になったんですってね、そう? 津田さんが答辞をお読みに成ったって云っていらしったけれども、それは真個なの」「え真個。芳子さんは真個にお出来になるのよ」「だからあんなに御威張りになるの、おおいやだホホホホ」・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・すべてこれ優等児製造はかくの如き文化性から生み出されるかという印象を与える雰囲気、画面の所謂芸術写真風な印画美であるが、私たち数人の観衆はこの文化映画として紹介されているもののつめたさに対して何か人間としてのむしゃくしゃが胸底に湧くのを禁じ・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・ 小学校を最優等でお千代ちゃんは卒業し、日比谷公園へ行って市長の褒美を貰った。その時、お千代ちゃんはやっぱり地味な紡績の元禄を着て海老茶袴をつけて出た。新聞が、それを質素でよいと褒めた。由子は、そうは思わなかった。いい着物をお千代ちゃん・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
出典:青空文庫