・・・ こう云う自分の心持の変化は、今まで矢張り何かで被われていた女性全般に対する心の持方を何時とは無く変えさせて来た。 現在では女性の――生活の様式がどうしても単調で変化に乏しいと云う点、自分が女性としての性的生活を完全に営んでいなかっ・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ 一九三二年の春から一九三三年の冬まで窪川鶴次郎が他の多くの仲間とともに奪われ、その間プロレタリア文化運動全般に益々困難が加わり、「ナルプ」は遂に一九三四年二月解散するに到った。経験に富んだ活動家を失ってからの仕事は内外とも実にむずかし・・・ 宮本百合子 「窪川稲子のこと」
・・・自分がまだ十分の経験や常識をもっていない、という不安ばかりでなく、もっと広く、もっと深く、日本の女性全般が本当には何も分ってはいないのだ、という普遍的な頼りないこわさを感じているのではないだろうか。何も判らないという感じは在りながら、一方に・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・そのあまりの無法さは、直接その刃の下におかれた人々の正気を狂わせたし、その光景全般の恐ろしさから、すべての知識人、勤労者、農民の精神と判断と発言とを萎縮させた。徳川時代のとおり、ご無理ごもっともと、ばつを合わせつつ、今日私たちの面している物・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 民主主義文学の運動が、この四年間の活動にもかかわらず、こんにち、現代文学全般のこの危期に、必要なだけ積極的影響をもち得ないでいるということが許されるだろうか。 一九四七年・八年・九年と、新日本文学会の批評活動は、表面からみるとたし・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・けれども、この現象を日本におけるプロレタリア文化運動全般から観察すると、そこにわれわれは、実にはっきりと階級的文化活動における婦人に関する分野の一般的立ちおくれを見ることが出来る。プロレタリア・農民婦人の文化水準は敵のブルジョア・地主的反動・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・それにもかかわらず、全般的に女が置かれている社会的な地位が低いことは、家庭の中にも現れて、良人、子供のために身を削る労苦多い妻、母としての毎日の生活が女に与えられている。「子は三界の首っ枷」という俗間の言葉は、日本の従来の家庭の内部をまこと・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・ダラディエの属していた急進社会党とレイノーの属していた中央共和派とは、フランスの社会生活全般に対してどんな見解の相異をもっていたかということや、ダラディエ一人の中にどんな自家撞着があり、更にどんな利害の対立をもっていたかということについて、・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・能動的精神といい、ヒューマニズムといい、それぞれ熱心に討論されたのではあったろうが、社会全般の中で見ればやはり文壇をめぐっての抽象的な専門家間の論議に終っていたことである。この一二年来、日本の大衆の日常生活と生活感情とは、少なからずショック・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・しかしそれも、庶物崇拝の高い階段としての偶像崇拝全般にわたってではない。ただ、優れた芸術的作品を宗教的礼拝の対象とする狭い範囲にのみ限られている。 特に私は今、千数百年以前の我々の祖先の心境を心中に描きつつ、この問題を考察するのである。・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫