・・・「あすこの君達のところじゃ、学生達が民衆への愛についていろいろ喋っている。俺はそれについて云いたい。愛する――というのは、妥協し、寛容し、黙認し、許すことだ。が、民衆の無知を黙認し、その迷妄と妥協し、そのすべての卑屈さを寛容し、その野獣・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・彼が、目白の学習院へ招ばれ、フロックコオトを着て述べたところの講演は、若い公達等に、人間性の自覚の必要を力説したものであった。 漱石は、飾らない言葉で一面では日露戦争後の日本人の盲目的なヨーロッパ崇拝を罵倒し、他の一面ではヨーロッパの文・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・あれも法なのだ。君達の仲間で崇拝している大先生があるだろう。Authoritaeten だね。あれは皆仏なのだ。そして君達は皆僧なのだ。それからどうかすると先生を退治しようとするねえ。Authoritaeten-Stuermerei という・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫