・・・同じ暦の下に歴史が展開されていても、海の彼方、海の此方では、歴史の内包している生活の諸条件が、特に社会における女の現実の立場について、非常にちがっている。広い客観の見とおし、そして人間の発展と進歩への道に立って「くれない」を見れば、女主人公・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・谷崎氏が日本文学に構成力が薄弱であることを不満とし、自身の抱負を文章によって述べていた頃の脂のきつい押し、あるいは、初期の作品が内包していた旺盛な生活力と「春琴抄」が示しているいわゆる完成の本質とをくらべて見て、私は大谷崎という名で呼ばれる・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・ 或る人々は、プロレタリア作品がこのように内包しているプロレタリア性というものに我から全幅の信頼をかけ、その仕事にたずさわっている自身をも比較的手軽くプロレタリア・インテリゲンツィアという風に規定して、自分たちがそのようなものであり、プ・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
・・・亀井はこのプロレタリア・ルネッサンスなるものの社会的根拠をプロレタリア革命を内包するところの日本の民主主義革命の特殊性において説明している。然しわれわれが種々な場合に注意しなければならないのは、過去の歴史上ある時期に与えられた名称を、現代の・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・日本の文学が現代の段階までに内包して来ている諸条件と、急速に変化しつつある世態とが、交互に鋭い角度で作用しあって、例えば、行動の価値と文学の本質及びその仕事に従うこととの間に、何か文学が社会的行動でないかのような、文学への献身に確信を失わせ・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・具体的な発展は、実に、そのようにして内包されている諸要因を、率直に作家自身、自身の課題として自身の内面からとりあげて吟味し直してゆくところからしか期待し得ないのである。 国民文学という声の中には、嘗て民衆の文学を唱えたとき、自身たちの文・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
出典:青空文庫