・・・その戦死した夫の遺書には、「再婚せんと欲すれば再婚も可なり。此の世に希望なくば潔く自決すべし」と書いてあった。そして未亡人は死を選んだのであった。私は「此の世に希望なくば」云々と書き得たことが如何にこの夫婦の平常の愛の結合の・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・ 玄太郎、せつの所得金は母上の保管を乞うべし一 富継健三の養育は柳子殿ニ頼む一 柳子殿は両人を連れて実家へ帰らるべし一 富継健三の所得金は柳子殿に於て保管あるべし一 柳子殿は時機を見て再婚然るべし 一時の感情に任せ前・・・ 二葉亭四迷 「遺言状・遺族善後策」
・・・ 本誌の、この号には食糧問題、労働問題、法律上の諸問題、生活再建の市民的技術上の問題、再婚問題、産児制限の諸問題が、特輯として扱われている。 これらの題目のうちで、過去二十年間、日本の婦人雑誌が扱ったことのないというトピックが、只の・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・順をおいてみて行ったら、それが母の再婚に苦しむ娘イレーネの顔であった。「早春」という映画は近ごろ評判にのぼったものの一つであったらしい。女の画家や、作家がそのつよい印象を語っていられる文章をどこかの広告でも読んだ。母ジェニファーの新しい・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・ 「夫婦再婚」 夫の発病によって新しい愛が妻との間にめぐむいきさつは、もっとしっくりとした筆致で描かれてよい。粗暴であった夫がやさしい夫となる、その動機に、エゴイズムがあるかないか、主人公は考えてみてよい。 「終りなき調べ」・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・人性の天然に従った両性関係の確立、再婚の自由、娘の結婚にあたって財産贈与などによる婦人の経済的自立性の保護などについて説いている諭吉の「新女大学」は、今日にあっても私たちを爽快にさせる明治の強壮な常識に貫かれている。 若い女性たちが数百・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
マクシム・ゴーリキイは一八六八年、日本の明治元年に、ヴォルガ河の岸にあるニージュニ・ノヴゴロドに生れました。父親は早く死に、勝気で美しい母はよそへ再婚し、おさないゴーリキイは祖父の家で育ったのですが、この子供時代の生活が、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイについて」
・・・或る士官に再婚していた母のワルワーラが良人に捨てられた状態で死ぬと、祖父はその葬式を終えて数日後ゴーリキイに云った。「さて、レクセイ、お前は俺の首にかかったメダルじゃねえ――お前のいる場処はここにはないんだ。」 かくて、八歳のゴーリ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ざる人生の天然に従った両性関係の確立、再婚の自由、娘の結婚にあたって財産贈与などによる婦人の経済的なある程度の自立性などである。詠歌には巧みなれども自身独立の一義については夢想したこともなく、数十百部の小説をよみながら一冊の生理書をよんだこ・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・夫を失った沢山の妻たち、母たちが、その悲惨をくぐり抜けて、自分と子供の生活を守り、うちたてていこうとしている努力の姿にも、深い必要と、よって来る社会的理由があります。再婚するしないということ、それは本当にそれぞれの人の心の自然な求めに従って・・・ 宮本百合子 「未亡人への返事」
出典:青空文庫