・・・その頃一と度は政治家たらんと欲し、転じて建築に志ざし、再転して今度は実業界に入ろうとした一青年たる自分が文学に興味を持つようになったのもまた、直接には龍渓鉄腸らの小説、間接にはこれらの新傾向を胚胎した英国の政治家的文人の典型であった。幸か不・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・すなわち一転すれば冒険心となり、再転すれば山気となるのである。現に彼の父は山気のために失敗し、彼の兄は冒険のために死んだ。けれども正作は西国立志編のお蔭で、この気象に訓練を加え、堅実なる有為の精神としたのである。 ともかく、彼の父は尋常・・・ 国木田独歩 「非凡なる凡人」
・・・もらって、そうして、その地獄の日々より三年まえ、顔あわすより早く罵詈雑言、はじめは、しかつめらしくプウシキンの怪談趣味について、ドオデエの通俗性について、さらに一転、斎藤実と岡田啓介に就いて人物月旦、再転しては、バナナは美味なりや、否や、三・・・ 太宰治 「喝采」
出典:青空文庫