・・・下手な剣劇の立ち回りがそれであろう。 エイゼンシュテインは、日本の文化のあらゆる諸要素がモンタージュ的であると論じ、日本の文字でさえも、口と犬とを合わせて吠えるというようにできあがっていると言い、また歌舞伎についても分解的演技の原理とい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ この上記の点で著しく対蹠的のコントラストを形成するものは、日本の剣劇映画における立ち回りの場面である。超自然的スピードをもって白刃と人形とが場面に入り乱れて旋渦のごとく回転する。すると、過去何百年来歌舞伎や講談やの因襲的教条によって確・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ こういう映画の剣劇的立ち回りではいつでも実に不思議な一種特別の剣舞の型を見せられるような気がする。それは、できるだけ活発に縦横無尽に刀刃を振り回して、しかもだれにもけがをさせないという巧妙な舞踊を見せてくれる。それからまたたいていの人・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 帰朝後ただ一度浅草で剣劇映画を見た。そうして始めていわゆる活弁なるものを聞いて非常に驚いて閉口してしまって以来それきりに活動映画と自分とはひとまず完全に縁が切れてしまった。今でも自分には活弁の存在理由がどうしても明らかでないのである。・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・「河原の剣劇」「御寺の前の追駆け」「茶屋の二階の障子の影法師」それから……。それからまたどの映画にも必ず根気よく実に根気よく繰返される退屈な立廻りが、どうも孑ぼうふらの群や蚊柱の運動を聨想させる。これを製作する監督、またそれを享楽する映画フ・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 浅草の興行街には久しく剣劇といいチャンバラといわれた闘争の劇の流行していたことは人の記憶している所である。博徒無頼漢の喧噪を主とした芝居で、その絵看板の殺伐残忍なことは、往々顔を外向けたいくらいなものがあった。チャンバラ芝居は戦争後殆・・・ 永井荷風 「裸体談義」
・・・二百六十四名、主に少女工剣劇ファン○職工と女工と別の出入口をもっているところもある。○壁のわきのゴミ箱。○脱衣室のわきの三尺の大窓。○あき地で塀なし。わきから通って、となりの工場へ行ける?○三井品川工場 塩原文作。資・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・エロ・グロ、剣劇の興行政策をこれまで日本で最もいい制作をしていた東宝にもちこんで、近代的な社会感覚をもっている従業員たちを追いはらっている渡辺銕蔵が、教員の資格審査委員の一人であるという事実は、見のがされてはならない。手のこんだ日本の民主化・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 東京へかえったら二三の知人が、 ――どうですね、日本のプロ文士の剣劇レビューは?と云って笑った。 ――ソヴェトのプロ文士の喧嘩もあんな工合なんですか。えらく荒っぽいことがすきと見えるね。 自分は返事に困った。だって、プ・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
出典:青空文庫