・・・その労作の面で課せられる仕事の実質は、大の男を瞠若たらしめるだけのものなのである。科学主義工業の提唱者は、おおうところなく明言している。例外なしに、農村の子女に適当な機械と設備とをあてがえば熟練の大衆化によって、数日にして「大の男の熟練工と・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・古風なものの考えかたでは、頭脳の労作と筋肉的労作との間に、人間品位の差があるようにあつかわれた。社会のための活動の、それぞれちがった部門・専門、持ち場というふうには感じられていなかった。その古風さに、近代の出版企業が絡んだ。出版企業は、作家・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ 沙漠という自然の事情と、それを生産的に開発しようとする人間の意志、土地の相貌が新しくなるにつれその労作の過程を通って人間が生活感情、世界観を新にして行く現実の例はソヴェト映画の「トルキシブ」ではっきり語られている。「トルキシブ」ほど有・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・、創意性などを計量し、「労作にむすびついた教育、具体的実践に結合した」教育こそ小学教育の基礎であると感じる。 たとえば「窓ふき」という集団的労作を子供らがみずから分業に組織したことを驚異した佐田が、そこから生産労働の分業について子供らに・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 例えば今日ではもう昔の物語になってしまった琉球のあの美しい絣織物にしても染めの技術にしても今はみんな壊れてしまってなくなったが、あれも土地の女の人の労作であった。ジャワ更紗など高い価値をもっていて大変美しい芸術的な香りをもっているもの・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・七年間の労作に堪ゆる人間が、枯淡であろうとも思わないし、無計画であるとも思わない。同じ十月の『文芸』に中村光夫氏が短い藤村研究「藤村氏の文学」を書いていて、中に「氏は自己の精神の最も大切な部分を他人の眼から隠すことを学んだのであろう」「おそ・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・この恐慌の時期に労作『経済学批判』第一分冊が出された。 ロンドンのディーン街の庭もない二間暮しの生活は、このように困難だった。が、マルクス夫妻の不屈な生活力と機智とは、この生活のなかから汲みとられるだけのよろこびをくみあげた。マルクスの・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・しかし、ケーテ・コルヴィッツの存在はドイツの誇りであるばかりでなく、その生涯と労作とは、決してただ画才の豊かであった一人の婦人画家としての物語に尽しきれない。ケーテは何かの意味で、絵画という芸術の船を人生と歴史の大海へ漕ぎすすめた女流選手の・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・創作コンクールが行われたりしたのは、いずれ戸外労作の少いシベリアの冬の季節のことでしたろう。そのころ、あなたのラーゲリでは音楽グループは、どんなことをしていたでしょう。演劇グループはあったでしょうか。アクチーブの人たちは創作コンクールなどに・・・ 宮本百合子 「結論をいそがないで」
・・・ ソヴェトの子供は、幼稚園で、或は小学校で、自然界と人間社会との関係を、日常のあらゆるいきた労作の中から直接学びとる。今、もう雪の底に春が匂いかけている。春大人は何をするか? 子供たちは大人をどう助けるか? 田舎では種蒔だ。 市・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
出典:青空文庫