・・・血雨声無く紅巾に沁む 命薄く刀下の鬼となるを甘んずるも 情は深くして豈意中の人を忘れん 玉蕭幸ひに同名字あつて 当年未了の因を補ひ得たり 犬川荘助忠胆義肝匹儔稀なり 誰か知らん奴隷それ名流なるを 蕩郎枉げて贈る同心の結 嬌客・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・ 三 別れの曲 ショパンがパリのサロンに集まった名流の前で初演奏をしようとする直前に、祖国革命戦突発の飛報を受取る。そうして激昂する心を抑えてピアノの前に坐り所定曲目モザルトの一曲を弾いているうちにいつか頭が変にな・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・自由党の竹内茂代女史が大日本婦人会の理事であったことは知らぬもののない名流女史であるし、校長、自由党支部長夫人、病院長などが出ている。進歩党その他の婦人代議士も、大体元代議士夫人、女流教育家、社長夫人、娘、重役、病院長、婦人会関係の知名婦人・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・婦人運動の各名流たちは、「精神総動員」に参加して、戦時国債や貯金の誘説のほかに働き、その名声は、戦争の進行につれて益々被いがたくなって来た国内の生活崩壊の事態を、あれやこれやと彌縫するためにだけ利用されるという惨めな状態に陥ったのであった。・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・こういう名流人たちの保身上の「都合」というものはいろいろはたから分らない事情があるのだろう。無力で小さい娘と、名をかくして親切をしてくれる人々に「英雄」が生きて苦しんでいたときの世話をゆだねたのなら、安心して、その身近い者であることを寧ろ誇・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・という記事があり、山川菊栄、森田たま、河崎なつの諸名流女史が夫々執筆していられる。河崎なつ氏をのぞいて、他の二人、特に山川菊栄女史の文章は面白い。女史は「先ず手近から」男を観察し、女中の留守には自分の洗ったお茶碗を傍で拭き、得意の庖丁磨きを・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・に参加していた名流婦人たちは、彼女たちのいわゆる時局的な動きの間で、はたしてどれだけ真に国民の感情に暖く賢くふれてゆくような仕事ぶりを示しただろう。自身がいわばすでに功成り名をとげた人々であるそれら大多数の婦人たちは、政治的に、すなわち客観・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 所謂名流家庭の親たちの中では駭然として或る恐怖を感じたひとびともあったであろう。好奇心に驚きの混った感情で、忽ち話題の中心とした令嬢らの夥しい数があったであろうことも、女子学習院という貴族の女学校に良子さんが籍をおいていた以上想像され・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・三九名の婦人代議士の殆ど全部は名流婦人と云われる人々である。僅かに柄沢とし子山崎道子が現実の勤労生活に結びついている位である。 私たちは、今回の教訓から非常に多くのことを学ばなければならない。まだまだ日本の民主化と婦人の幸福には遠い総選・・・ 宮本百合子 「春遠し」
朝鮮に戦争がおこってから、世界じゅうの平和運動は目立って活溌になり、真剣さを加えた。日本の五人の名流婦人たちが、「非武装国日本女性の講和問題についての希望要項」をダレス国務省顧問に託して、アメリカの世論に平和を訴えたことは・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
出典:青空文庫