・・・岡村は又出し抜けに、「君達の様に文芸に遊ぶの人が、時代おくれな考えを持っていてはいけないじゃないか」 鸚鵡が人のいうことを真似るように、こんな事をいうようでは、岡村も愈駄目だなと、予は腹の中で考えながら、「こりゃむずかしくなって・・・ 伊藤左千夫 「浜菊」
・・・げるとか家を釘附けにするとかいうことになって居るんではないのだからね、相当の手続を要することなんで、そんな無法なことは出来る訳のものではないがね、併し君、君もそんなことをしとってもつまらんじゃないか。君達はどう考えて居るか知らんがね、今日の・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・地球の軌道は楕円の環をなしていると君達は思うだろうが大ちがいサ、実は月が地球のまわりを環をなしながら到底は大空間に有則螺線を描ていると同じ事に、地球も太陽に従ッて有則螺線を大空間に描いているのサ。即ち自転も螺旋サ。又一年の動きも螺旋サ。有則・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ 君達ァ白テロ白テロってデマるから、一つその白テロをくわしてやるんだ」 ドズンと、竹刀で床を突いた。長い竹刀はちゃんとさっきからその男の横の羽目に立てかけてある。「共産党との関係を云えッ」「――そういきなり呶鳴ったって、何が何だ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・しかも其では駄目だ。君達は生命の外観だけは捉える。けれども溢れ出る生命の過剰を現すことが出来ない。」バルザックが、以上のような規準に従って現実ととり組み、自身の文体をも構造しようと努力した態度の内には、今日においても学ぶべき創作上の鋭い暗示・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・「あすこの君達のところじゃ、学生達が民衆への愛についていろいろ喋っている。俺はそれについて云いたい。愛する――というのは、妥協し、寛容し、黙認し、許すことだ。が、民衆の無知を黙認し、その迷妄と妥協し、そのすべての卑屈さを寛容し、その野獣・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・あれも法なのだ。君達の仲間で崇拝している大先生があるだろう。Authoritaeten だね。あれは皆仏なのだ。そして君達は皆僧なのだ。それからどうかすると先生を退治しようとするねえ。Authoritaeten-Stuermerei という・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫