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・・・なんて下手くそな文章だ。嘘字だらけじゃないか、と思っているに違いない。ああ、印刷所では、私の無智の作品は、使い走りの小僧にまで、せせら笑われているのだ。ついに貴重な紙を、どっさり汚して印刷され、私の愚作は天が下かくれも無きものとして店頭にさ・・・
太宰治
「乞食学生」
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・・・一枚書くのに、二、三度は、辞林を調べている。嘘字か、どうか不安なのである。 自作を語れ、と言われると、どうして私は、こんなに怒るのだろう。私は、自分の作品をあまり認めていないし、また、よその人の作品もそんなに認めていない。私が、いま・・・
太宰治
「自作を語る」