・・・それから十年の後高等学校在学中に熊本の通町の古本屋で仏語読本に鉛筆ですきまなしにかなの書き入れをしたのを見つけて来て独習をはじめた。抑圧された願望がめざめたのである。子供に勉強させるには片端から読み物に干渉して良書をなるべく見せないようにす・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
熊本第五高等学校在学中第二学年の学年試験の終わったころの事である。同県学生のうちで試験を「しくじったらしい」二三人のためにそれぞれの受け持ちの先生がたの私宅を歴訪していわゆる「点をもらう」ための運動委員が選ばれた時に、自分・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・自分の高等学校在学中に初めて奉公に来て、当時から病弱であった母を助けて一家の庶務を処理した。自分が父の没後郷里の家をたたんでこの地へ引っ越す際に彼女はその郷里の海浜の村へ帰って行った。彼女の家を立てるべき弟は日露戦争で戦死したために彼女はほ・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
・・・ 在学中の彼は試験官の銘々の癖をよく呑込んで、例えばトドハンター先生の出す問題を予知したりした。ある試験官は「ストラットの答案は多くの書物よりもいい」と云った。 一八六五年の正月に彼は遂に Senior Wrangler の栄冠を獲・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・それはまだお茶の水高等女学校に在学中、何の見当もなく、一生懸命に書きました処女作「貧しき人々の群」を坪内逍遙博士に見ていただきました処、意外にも非常なお推奨を受けまして博士のお世話で中央公論に発表されたので、幸い有難い評判をいただきました。・・・ 宮本百合子 「処女作より結婚まで」
出典:青空文庫