・・・雄勁であるからこそほとんど優美であり、堅忍でありえてはじめて湛えられる柔和の情感にみち、彼らの科学のようにリアリスティックであり、彼らの生産プランのようにテーマと様式の統一にたいして本気である、そういう文学が、彼らの偉大な勝利ののちに生みえ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 勇気とか堅忍とかいうことがしばしば云われるが、勇気や堅忍を可能にする力は何によって湧くのだろう。生活の意味に対する明るい知と愛とを抜いて、人は真に勇気に満ちることも堅忍であることも不可能である。勇気とか堅忍とかいうものは、結果ではなく・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・ あなたがた革命の指導者たちと、根気づよい中国の人民とは、この日までに、幾多の辛酸とおびただしい犠牲を堅忍しました。それらは、人類の誇りとなる英雄的な行動でした。いま、わたしたちが、中国人民の勝利に対して衷心からのよろこびと友誼の感情を・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・婦人の堅忍な心で難局をしのぐということの真の意味は、最低でも皆そうだからと変にすてて、安心した生活態度をさしているのではないことは明らかなことだと思う。 宮本百合子 「その先の問題」
・・・新しい女性の活動の領域に一歩ふみ出したそれらの雄々しい若い女性たちが、そのように成功した結果で人々に親愛の印象を与えるまでに経験ある困難と堅忍とを、私たちはあらためて評価しなければならない。女性が空間を支配する程度に従って、女性への偏見がお・・・ 宮本百合子 「空に咲く花」
・・・キュリー夫人の科学上の学識、技能を更に広いところから包んで、そのものの完成をも可能ならしめたもの、それはもとより当時の社会の条件と、彼女自身の堅忍であり、不撓な意志でもあるが、もう一歩つきつめてその堅忍や強靭な意志が何処から生れて来ていたか・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・同じスラヴ人の同時代人には二十年の流刑に堪えたチェルヌイシェフスキーをはじめ、七〇年代八〇年代以降今日に至るまでに、人類の中で最も堅忍と不撓不屈の意力によって歴史を押しすすめた更に多くの誇るべき大人物がスラヴ人の中から出ているのだから――。・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・借金をしてまでの大望が娘によって裏切られた落胆についても、母はそれを率直にありのままは話さず、娘の大成のためには金銭をおしまず、堅忍をもって耐える母という風に道徳化して語った。それが又私の心に体の震えるような憎悪を呼び起すのであった。そうい・・・ 宮本百合子 「母」
・・・かく理解することからその中に在る可能を見つけ出して、その可能は一杯に育てたいという努力で生きており、その努力に甘えず、人類の進歩から的はずれなものとならないためには、一層広く透徹した人間生活への理解、堅忍と愛とが必要と思われている。 仮・・・ 宮本百合子 「フェア・プレイの悲喜」
・・・中国の作家が封建的な重荷とたたかい時を同じくして歪んだる新しいものともたたかわなければならない苦難と堅忍とは、すべておくれて急に育った国の文化が生きぬかなければならぬ急坂な路なのである。 第三回の文化擁護の国際作家会議はアメリカで開かれ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫