・・・ 二人の士官が、ともへ帰ると、ボースンとナンバンとが呼ばれた。 彼等は行った。 船長は、横柄に収まりかえっていられる筈の、船長室にはいなくて、サロンデッキにいた。 ボースンとナンバンとが、サロンデッキに現れるや否や、彼は遠方・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・終に記者と士官とが相談して二、三人ずつの総代を出して船長を責める事になった。自分も気が気でないので寐ても居られぬから弥次馬でついて往た。船長と事務長とをさんざん窮迫したけれど既往の事は仕方がない。何でも人夫どもに水を飲ませるのが悪いというの・・・ 正岡子規 「病」
・・・ ペトログラード士官学校の急進的卒業生によって組織されたのだろうか? そうではなかった。グラトコフの「セメント」でわれわれがよんだように、工場の赤衛兵の発達したものであったろうか? そうでもない。ブジョンヌイという一人の農民出身で、戦術にか・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・非常に人物の傑れた叔母に育てられ、その没後数年は当時のロシアの富裕で大胆で複雑な内的・社会的要素の混乱の中におかれている青年貴族、士官につきものの公然の放縦生活を送った。 三十四歳になったとき、既に「幼年時代」「地主の朝」「コサック」「・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・だって、帝国主義国の海軍士官たちが真に迫っていて、思わず中国のプロレタリアートと一緒にその横暴ぶりを憤慨してしまった。 メイエルホリド劇場は、一体に研究心がつよい。革命直後、メイエルホリドが南露からモスクワへ帰って来て、教育人民委員会の・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・赤軍が逆襲して、市ソヴェトに赤旗が翻ったかと思うと、チェッコの侵入軍が、派手な制服の士官に引率されて襲撃して来る。 赤旗をかくせ! 党の政治部は書類を焼きすてて地下へもぐった。工場の門前にバリケードが築かれる。やって来るならやって来・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・それからバクニンは、莫斯科と彼得堡との中間にある Prjamuchino で、貴家の家に生れた人で、砲兵の士官になったが、生れ附き乱を好むという質なので、間もなく軍籍を脱して、欧羅巴中を遍歴して、到る処に騒動を起させたものだ。本国でシベリア・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・仲為のような為事をする労働者の家だと士官が話して聞せた。 田圃の中に出る。稲の植附はもう済んでいる。おりおり蓑を着て手籠を担いで畔道をあるいている農夫が見える。 段々小倉が近くなって来る。最初に見える人家は旭町の遊廓である。どの家に・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・ツ会に、洋行がえりの将校次をおうて身の上ばなしせしときのことなりしが、こよいはおん身が物語聞くべきはずなり、殿下も待ちかねておわすればとうながされて、まだ大尉になりてほどもあらじと見ゆる小林という少年士官、口にくわえし巻煙草取りて火鉢の中へ・・・ 森鴎外 「文づかい」
・・・世間でおめかしをした Adonis なんどと云う性で、娘子の好く青年士官や、服屋の見本にかいてある男にある顔なのです。そこでわたくしは非常に反抗心を起したのです。どうにかして本当の好男子になろうとしたのですね。 女。それはわたくしに分か・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
出典:青空文庫