・・・社会組織の一部は、女性を人として生活させる為に変更されようとしている。 けれども、現代の一般社会には、女性の人としての生活、人としての発展を心から肯定し助力しようとする傾向と並んで、因襲的な過去の亡霊にしがみ付いて、飽までも女性を昔なが・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ 会わない、見ない、と云うことが、何も私共が母娘であり、Aと自分とが夫妻であると云う事実に変更を与えるものではない。其那ことをし、故意に生活に強制した一点を作るより、互に理解しようと努力し、友情で団結して行く気に、どうしてなれないのかと・・・ 宮本百合子 「傾く日」
・・・が自己批判して、工場、クラブ内の文学研究会指導方針を変更したことは前回に書いた。 孤立的な余技的趣味への閉じこもりを排撃しろ。 文学研究会員は大衆的に壁新聞、工場新聞へ動員され、活溌な文学活動を通して、勤労者の世界観と自発性とを高め・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・何ぜならこれは、今迄用い適用されていた感覚が、その触発対象を客観的形式からより主観的形式へと変更させて来たからに他ならない。だが、そこに横たわった変化について、理論的形式をとってより明確な妥当性を与えなければならないとなると、これは少なから・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・軍では時日を変更することは出来ない。そこで、その日は栖方を除いたものだけで試験飛行を実行した。見ていると、大空から急降下爆撃で垂直に下って来た新飛行機は、栖方の眼前で、空中分解をし、ずぼりと海中へ突き込んだそのまま、尽く死んでしまった。・・・ 横光利一 「微笑」
・・・もしこの画が現在の描き方で行けるところまで行き切ったものとすれば、ここに画家の態度を変更する必要が示されているのである。これまでの日本画が欲しなかった所を欲し、これまでの日本画が好んだ所を捨てるという人が、竜子氏のほかにももう少し現われて来・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・ 目先の変更を必要としないほどに落ちついた大家は、自己の様式の内で何らか「新しい試み」をやる。主として画題選択の斬新であるが、時には珍しい形象の取り合わせ、あるいは人の意表にいづるごとき新しい図取りを試みる。しかしこれらの画家を動かして・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・それはもう変更のできない事実である。たとえ「あの時」私が、いずれの行為をも自由に選び得たとしても、私の実行したのはただ一つであった。この一つのほかに事実はない。「あの時ああすれば」という感じは、この事実が必然でなかったと主張するにほかならな・・・ 和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
・・・この計画は後に変更され、麹町の屋敷はたしか百坪ぐらいだったと思うが、しかしその後にも、大きい住宅に対する嫌悪の感情は続いていた。あるとき藤村は、相当の富豪の息子で、文筆の仕事に携わろうとしている人の住宅の噂をしたことがある。藤村はその住宅の・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
・・・ もし初めからこの両者のいずれをも正しく味わい得る人があるとすれば、その人の眼は生来自由に度を変更し得る天才的な活眼である。誰でもがそういう活眼を持つというわけには行かない。通例は何らかの仕方で度の合わせ方を先人から習う。それを自覚的に・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
出典:青空文庫