・・・しかし、六月号の批評では、大岡昇平がスタンダール研究者であるという文学的知識に煩わされて、その作者が誰の追随者であろうとも、作品の現実として現代の歴史の中に何を提出しているかという点が、力づよく見きわめられなかった。火野葦平の「悲しき兵隊」・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・、田村泰次郎一派の人々のいくらか文壇たぬき御殿めいた生きかたそのものや、そのことにおいていわれている文学的意図は、はったりに堕している事実や一方で彼がファシズムに反対し平和を守る側に立っていることでは大岡昇平の文学や「顔の中の赤い月」、「に・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・現地の軍当局の信じられないほどの無責任、病兵を餓死にゆだねて追放するおそろしい人命放棄についても記録されはじめた。大岡昇平氏の「俘虜記」そのほかの作品に見られる。ソヴェト同盟に捕虜生活をした人々のなかから、「闘う捕虜」「ソ同盟をかく見る」「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・への大岡昇平についても考えられることではないだろうか。スタンダリアンであるこの作家の「私の処方箋」は、きょうのロマネスクをとなえる日本の作家が、ラディゲだのラファイエット夫人だの、その他の、下じきをもっていて、その上に処方した作品をつくり出・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・そして大岡越前守が「あの封建時代、みずから捕え、みずから取調べるというもっての外の裁判制度の時代ですら、今日三尺の児童も大岡裁き、大岡裁判といえば存ぜないものがないくらいの名をのこされた」その誠意、見識をもって本件をあつかってほしいと要望し・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫