・・・ 一、青山への引越し、そのための感情 一、その大晦日 一、春 三月 福井より老父来、自分の心持。 前後のいきさつ、A、「今月は伸子が二つも三つも小説を書いたから大変やりくりに都合がいい」 三宅坂、赤坂見つけの桜 大正・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・ 大晦日や元旦の朝を、自分は子供の時から、いつにも増して賑やかに、家族揃って歓び迎える習慣をつけられて居た。 クリスマスの贈物も、大晦日まで繰のべられる。部屋部屋の大掃除、灯がついてから正月の花を持って来る花屋、しまって置いた屠蘇の・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・女中達が、夜なかに吊橋を渡って髪結いに出かける下駄の歯の音だけが、どうやら大晦日らしい。去年の都会的越年とはひどく違う。去年はフダーヤと暁の三時頃神楽坂で買物をした。正月元日。 朝のうち曇って居たが午近く快晴。くに、奇麗な髪で、・・・ 宮本百合子 「湯ヶ島の数日」
・・・学生は料理屋へ大晦日の晩から行っていまして、ボオレと云って、シャンパンに葡萄酒に砂糖に炭酸水と云うように、いろいろ交ぜて温めて、レモンを輪切にして入れた酒を拵えて夜なかになるのを待っています。そして十二時の時計が鳴り始めると同時に、さあ新年・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・新年言志みことのりあやにかしこみかしこみてただしき心おこせ世の人廿七日の怪事件を聞きていざさらば都にのぼり九重の宮居守らん老が身なれど野老 こういう手紙が大晦日の晩についた。野老は小生の老父で、安・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫