・・・また、支那の僻陬の地の農民たちは、日清戦争があったことも、清が明に取ってかわったことも知らずに、しかし、軍隊の略奪には恐ろしく警戒して生きている、──こういうことは、支那の奥地に這入った者のよく見受けるところであるが、これも独歩は、将校のち・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・冬になると、北海道の奥地にいる労働者は島流しにされた俊寛のように、せめて内地の陸の見えるところへまでゞも行きたいと、海のある小樽、函館へ出てくるのだ。もう一度チヤツプリンを引き合いに出すが、「黄金狂」で、チヤツプリンは片方の靴を燃やしてしま・・・ 小林多喜二 「北海道の「俊寛」」
・・・中共勝利とともに国内に流布した中共関係の文書の中には、かつて特務機関として奥地の情報を集めていた文書があり、獄中で検事局からの諮問に答えて上申した文書がある。それらは、侵略国日本が中国人民と中共からかすめとった収奪物でなくて何だろう。注意ぶ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・が、八月十五日から数日たってやっと降伏した知らせが届いた満蒙奥地の開拓移民団の正直な老若男女が、ことの意外におどろいて数百名の生死を賭す団の進退をうちあわせようと駆けつけたときには、もうどこにも関東軍の影はなかった。そのために、うちすてられ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・中国の生活を描いたこれらの作品は、とくに今日の日本の読者にはぜひ熟読されるべき性質のものであるという感が深い。パアル・バックはアメリカ人である。中国の奥地へ入って、そこで生涯を終ったアメリカ宣教師「闘える使徒」として彼女に描かれている父の娘・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫