・・・話しばかりに聴いて想像していたのと違って、僕が最初からこの子を見ていたなら、ひょッとすると、この子を子役または花役者に仕上げてやりたいなどいう望みは起らなかったばかりか、吉弥に対してもまた全く女優問題は出なかったかも知れない。今一人、実の妹・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・では、ソヴェト演劇においてこれまでほとんどつかわれなかった子役の形でピオニェールを出し、ごく自然な明るさで、農村と都会の集団農場中央との連絡として重大な役割を演じさせている。 これなども劇の現実性を高めている。 五月二日ソヴェトの勤・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・婦人倶楽部を御覧なさい。子役までつかって戦争の記事だらけです」「冗、冗談云っちゃいけませんよ」 不自然にカラカラと清水は笑った。「扱いようの問題じゃないか。……つまりこういう風に扱うのはいけないと云うわけなんです」「だが、戦・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・とを、大人の一生懸命さにひきつけて意味づけたり、無心さを、いじらしさと溶けあわさせたりして、大人の感傷に作家が我知らずこびるとき、子供の世界の最も生粋な陽なたくさくて、心持のいい颯爽さは消えて、そこに子役が登場して来る。 現代の文学史の・・・ 宮本百合子 「子供の世界」
・・・ 今日の観衆は、又、大人の感情で子役をつかう所謂童心を描く映画に対して、もっと清潔であってもいいのだと思う。無制限に甘え合わないでいいと思う。文学の作品としてそういう境地に種々の問題があるように、映画にしても考え直さるべきところがある。・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
出典:青空文庫