・・・東洋大学を卒業してすぐ官立大学の図書館に働くことになったが、「執務においては常に専門家であることを要求され、又満足に職をつづけて行く以上は専門家の域にまで進まなくてはならない」「このままでいたならば、私は遂に何もかもなくなって了う。」そう焦・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・そのために、わたしが十三となり十四五となるにつれ、家庭の重みよりもむしろ通っていた官立の女学校の教師からうける言うに言えない圧迫を実に苦しんだ。女学校の教師は、自分の家にないお嬢さんの型、女だからという型、女のくせに、という型、それらのすべ・・・ 宮本百合子 「私の青春時代」
・・・ 花房が大学にいる頃も、官立病院に勤めるようになってからも、休日に帰って来ると、先ずこの三畳で煎茶を飲ませられる。当時八犬伝に読み耽っていた花房は、これをお父うさんの「三茶の礼」と名づけていた。 翁が特に愛していた、蝦蟇出という朱泥・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
出典:青空文庫