・・・に抗議する声明書、それらの集団的な抵抗の裏づけとして本当に一人一人が、自分の生活態度の全面でどんな抗議を行っているか、それを明瞭に意識において見なければ、日本の民主化を守り通し、それを前進させるための実力としては足りないということです。・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・十九の少女は、自分の日々がその中で営まれている環境の内部にある複雑な家族関係とその感情、弟の短い生涯を悲劇的にした家族制度の因習ということには、とりくむ実力をもっていなかったことが、この短篇に語られているのである。「貧しき人々の群」「日・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・ 他のヨーロッパ諸国の社会生活の苦悩と自分から出口をふさいでもがいている自己矛盾とに強い印象をうけて戻って来た作者は、日夜の共感をもって、ソヴェトの人々が社会主義社会を確立するために奮起した情熱と実力とにふれた。社会の現実はどのようにし・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・とその芸術を新しくし、なおさらに新しい作家と文学とをもりたててゆこうと欲するとき、自分たちの文学活動の自立性を、民主の立場にたって、経済的に政治的に守る力さえもたないで、どうして遠大な希望にふさわしい実力をもちえよう。これまでにも、民主の方・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・江戸趣味といわれる、着物や羽織の裏に莫大な金をかける粋ごのみ、一見木綿のようでひどく質のいい絹織である結城紬、こういうこのみは、政治上の身分制に属しながら、経済の実力では自分を主張した町人階級の反抗の形としてあらわれたのであった。 徳川・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・真個に気を入れて見て、其でうんと云わせる舞台が、女優独特の実力で創造されて欲しいのである。 自分が終りまで遂にたんのう出来なかった原因の一つは、脚本そのものが余り光彩陸離たるものでなかったことと、二つには、演出する俳優の心の態度が、ぴっ・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・ 一体、人なみより金銭の事にうとい栄蔵の目には、お金の実力より以上に金銭に対して発動する力の大きさ猛烈さがうつった。 あきれて口を噤んだ兄の前でお金は云いたいだけの事を並べた。 夜着をすっぽり被った中でお君は、妹につけつけ云われ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・が幾千幾万と、より集った、最も実力のある、決定権をもったものとして、見られています。ところが日本ではどうでしょうか。「公衆食堂」へ農林大臣が食事に行ったという例があったでしょうか。同じ「公」という字でも、それに「衆」という字がついて公衆・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・で平穏に自分の囲を取捲いていた生活の調子は崩れてしまうだろう、自分はまるで未知未見な生活に身を投じて、辛い辛い思いで自分を支えて行かなければならない――ここで、人として独立の自信を持ち得ない、持つ丈の実力を欠いている彼女は、何処かに遺ってい・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・自分の体力、智力、自分とひととの経験の総和についての知識とその実力とが、むき出しな自然の動きと直面し対決してゆく、その味わいでの山恋いではないだろうか。槇有恒氏の山についての本はどんなその間の機微を語っているか知らないけれど、岩波文庫のウィ・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫