* 旧暦の六月二十四日の晩でした。 北上川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻は微かな星のあかりの底にまっくろに突き出ていました。 獅子鼻の上の松林は、もちろんもちろん、まっ黒でし・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
一キッコの村の学校にはたまりがありませんでしたから雨がふるとみんなは教室で遊びました。ですから教室はあの水車小屋みたいな古臭い寒天のような教室でした。みんなは胆取りと巡査にわかれてあばれています。「遁げだ、遁げだ、押えろ押え・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・ 桃色のペラペラの寒天でできているんだ。いい天気だ。 ぽかぽかするなあ。」 若い木霊の胸はどきどきして息はその底で火でも燃えているように熱くはあはあするのでした。木霊はそっと窪地をはなれました。次の丘には栗の木があちこちかがやく・・・ 宮沢賢治 「若い木霊」
・・・ 田舎新聞 ○「寒天益々低落 おい大変だぜ 寒天下落だよ 中央蚕糸 紅怨 紫恨 ◇二度の左褄 上諏訪二業 歌舞伎家ではさきに 宗之助 初代福助の菊五郎の二人が古巣恋しくて舞戻ったが、・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
出典:青空文庫