・・・「帝国主義トファッシズムニ対抗セヨ」赤いプラカート。 戸のしまった種々な研究室が並んでる。が、日本女はモスクワ一大きい鉄道従業員組合のクラブで、今廊下の見学してはいられないんだ。監督を見つけ出さなければならない。今夜の催しのために、彼女・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 日本のようについさきごろまで中世的絶対主義が支配していた国、ファシズムに対抗する人民の自主的結集のなかった国柄のところでは、今日、再燃するファシズムとバランス上からも、レフティストの存在は必要である。このことを一般は現実問題として理解・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・このことは、市場としてのジャーナリズムの上をほとんど独占しているかのように見える、直木三十五などを筆頭とする大衆文学と陸軍新聞班を中心として三上於菟吉などがふりまくファッシズム文学とに対抗してあげられたブルジョア純文学作家たちの気勢であった・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 自分は仕合わせに、不正だと思ったことには、どこまでも対抗して行く力を与えられている。その反抗に対して機嫌を損じる者があれば、いくらあっても、自分はちっとも恐ろしくはないと思っていられる。けれども……。彼女はほんとに興奮せずにはいられな・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・文学者の力量は文学者として十分生活上の経済的基盤を与えるし、そのことは作家の思想性をも確立させ、強大な出版企業に対抗するだけの社会性を身にそなえたものとして来ているかと思える。 日本の作家の事情は、少くともこれまでは、中途半端であった。・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・そしてそれが、自分を女という古い掟で縛りつけ圧服してしまおうとする凡ゆる古い力に対抗し得るたった一つの道だと思った」女としての感情がここへ来るにはアサが単にお下髪の使い屋から苦労してたたき込んだ腕をもっているというだけが理由ではない生活感情・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
・・・一葉は明治の初め、自然主義が起ろうとする頃、それに対抗して活溌な文芸批評などを行っていた森鴎外を先頭とし、若い島崎藤村その他によって紹介されたヨーロッパのロマンティシズムの影響をうけながら、一葉自身がもっていた日本風の昔気質のような気分――・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・職工の多数の意志に対抗する工場主の一人の意志がなくてはならない。工場主は自分の意志で機関を運転させて行くのである。 社会問題にいくら高尚な理論があっても、いくら緻密な研究があっても、己は己の意志で遣る。職工にどれだけのものを与えるかは、・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・ わがザックセン軍団につけられて、秋の演習にゆきし折り、ラアゲウィッツ村のほとりにて、対抗はすでに果てて仮設敵を攻むべき日とはなりぬ。小高き丘の上に、まばらに兵を、ザックセン、マイニンゲンのよつぎの君夫婦、ワイマル、ショオンベルヒの両公・・・ 森鴎外 「文づかい」
・・・ナポレオンの爪は彼の強烈な意志のままに暴力を振って対抗した。しかし、田虫には意志がなかった。ナポレオンの爪に猛烈な征服慾があればあるほど、田虫の戦闘力は紫色を呈して強まった。全世界を震撼させたナポレオンの一個の意志は、全力を挙げて、一枚の紙・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫