・・・誰からも尊敬されているような人物よりも、誰からも軽蔑されている人物の方が正確に人をよく見ていることの多いのも、露骨に人はそのものの前で自分をだましてしまうからにちがいない。このようなところから考えても、ドストエフスキイが伯爵であるトルストイ・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・ひどく尊敬しているらしい口調で話して、その外の事は言わずにしまった。丁度親友の内情を人に打ち明けたくないのと、同じような関係らしく見えた。 そこで己は外の方角から、エルリングの事を探知しようとした。 己はその後中庭や畠で、エルリング・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・一〇 私は彼を愛し、尊敬し、恐れ、憐れみ、そして侮蔑する。 私は愛する者、尊敬する者、恐れる者、憐れむ者、侮蔑する者を持っている。また愛し尊敬する者、愛し憐れむ者、憐れみ侮蔑する者を持っている。尊敬し恐れる者、恐れ侮蔑す・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫