・・・です、それこそ今のおかたには想像にも及ばぬことで、じゃんと就業の鐘が鳴る、それが田や林や、畑を越えて響く、それ鐘がと素人下宿を上ぞうりのまま飛び出す、田んぼの小道で肥えをかついだ百姓に道を譲ってもらうなどいうありさまでした。 ある日樋口・・・ 国木田独歩 「あの時分」
・・・そして、昭和十一年の調査によると、小学校を卒業した子供たちの就業する先は農業が第一位を占めていて、男子は十九万六千余人女児は十八万四千五百余人であった。 農家を維持するに必要な最小限の耕地面積は略一町七反であると云われている。 とこ・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・何しろ、五ヵ年計画の初め、ソヴェト同盟には五十万の失業者――未就業労働者があった。五年間にその半数を生産の中に吸収出来ればよいと予定されていた。ここでも亦、愉快な予定はずれが生じた。――生産の予想外の拡大は予想外な速度で労働力を生産の各部へ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ソヴェトでは働く婦人の健康の特にこの点を注意して、新しく制定された工場の規定では、これまで一時間あった昼休みの外に午前と午後、或る時間内機械を休止させ、就業中窓をしめているところでは窓をあけ、皆そろって深呼吸と簡単な全身の体操をすることにな・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・日本では年々労働にしたがう若い女のひとの数は殖えており、先日それぞれの道の専門家が新聞で語っていたとおり、大衆の経済事情が近頃わるくなって来たにつれ、若い婦人の就業年限がのびて、婚期もおくれて来ているのが、今日の実際である。昔から、婦人の犯・・・ 宮本百合子 「職業婦人に生理休暇を!」
・・・ 経済再建のトップに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、女子の就業率引下げと男子労務の増強、四、通勤による工員の確保、などを要望すると語られてい・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・十六人は彼を入れすぐ立ち、六時の夕飯三十分の休みに、文選十六人はベン当箱をもって一つところに集り、きめた以上の仕事はしないこと、きめた以上は監督のところへ突かえしにゆき残業させぬようにしようと決議して就業。「ガンばれ」「うら切るとゲンコだぞ・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・ 世界にあふれる凡そ四千万人以上の餓えた失業プロレタリアートと、いつその失業群につきおとされるかわからない就業労働者とは互に手をつなぎ、このジリジリ迫って来る止めどのない餓死から身を守ろうと戦ってるのだ。 世界じゅうのどんな意識の低・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・三月までに八十三万人が就業と示されているが、この新しい就業者も、職場へ行くには電車がいるだろう、省線にものるだろう。 企業家のサボタージュを罰することも、是正する力も失っているのに、労働運動取締りの四相声明を公表した当局は、「各種民需産・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・何故なら景気がよい、就業率は上向きだと云っても、工場に働いている人々の賃銀の上昇には残業割増、歩増などの時間外労働強化がついているのであるし、小売物価の急激な騰貴は結局、いくらかましな工場労働者の賃金をも今日では凌いでしまっている。実質賃銀・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
出典:青空文庫