・・・もうまるでひどい峡谷になっているんです。」 そうそうここはコロラドの高原じゃなかったろうか、ジョバンニは思わずそう思いました。カムパネルラはまださびしそうにひとり口笛を吹き、女の子はまるで絹で包んだ苹果のような顔いろをしてジョバンニの見・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
一 カールの持った「三人の聖者」 ドイツの南の小さい一つの湖から注ぎ出て、深い峡谷の間を流れ、やがて葡萄の美しく実る地方を通って、遠くオランダの海に河口を開いている大きい河がある。それは有名なライン河・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・荘重 山と峡谷 ○信州の女○眼比較的大 二重瞼で、きっとしたような力あり。野性的の感○蚕種寒心太製造 隣室の話 男、中年以上姉さんという女 もっと若い女、 芸者でもなし。品の・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ 岩ばかりの峡谷の間から、かすかに、目に立たず流れ出し、忍耐づよく時とともにその流域をひろげ、初めは日常茶飯の話題しかなかったものが、いつしか文化・文学の諸問題から世界情勢についての観測までを互に語り合う健やかな知識と情感との綯い合わさ・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
出典:青空文庫