・・・ フォードが一品一工場としたやりかたで生産工程の組織では全国的にフォード化し分業化しつつ、しかも、村を決してその工業を専門とする工村にはせず、飽くまで副業にとどめて、古来のままの農業精神を主とし、農村全体としての文化の水準などはあるがま・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・、という字を戴いた雑誌その他の出版物は、紙の払底や印刷工程の困難をかきわけつつ、雑踏してその発刊をいそいでいる。 しかし、奇妙なことに、そういう一面の活況にもかかわらず、真の日本文化の高揚力というものが、若々しいよろこびに満ちた潮鳴りと・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ ところが、他の一面に近頃ではいろいろの軍需工場に多数の女が働いているし、その農村の工業化の問題においても、専門家大河内子爵は、機械製造工程の発達した現在にあっては、安い賃銀の農村の娘が、たやすく、自動車の部分品をも作り得るから、農村工・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・それは当然当時の製作工程の未熟、原始性をも語っている。 文学創作の過程は複雑で、個性的であるけれども、主観的に所謂たたき込んだ勘にたよるばかりで、作家が常に必ずしも現実の核心にふれて描き得るかどうかということには大きい疑問があると思う。・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・彼は自動車製造という長い全面工程のたった一つの小部分にだけ精通し、労働の全能力がそこに規画されていわば精巧なかたわにされてしまっているから、ほかのところでは役にたたない。フォードの労働者が、不景気につれて案外に低賃銀をうけ入れ、労働時間の短・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・梶は学問上の彼の苦しみや発明の辛苦の工程など、栖方から訊き出す気持はなくなった。また、そんなことは訊ねても梶には分りそうにも思えなかった。「お郷里はどちらです。」「A県です。」 ぱっと笑う。「僕の家内もそちらには近い方ですよ・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫