・・・ 牢屋でフォーサイスが敵将につかみかかって従者に打ちのめされる。敵将が「勇気には知恵が伴なわなければだめだよ」といって得意になる。敵将が去って後に仲間が「ばかやろう」とののしるのには答えないで黙って握りこぶしをあけて見せる。つかみかかっ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・例えば『諸国咄』では義経やその従者の悪口棚卸しに人の臍を撚り、『一代女』には自堕落女のさまざまの暴露があり、『一代男』には美女のあら捜しがある。 このような批判の態度をもって西鶴が当時の武士道の世界を眺めたときに、この特殊な世界が如何に・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・画面の重心を敏感にうけて、その鳥居が幾本かの松の幹より遙に軽くおかれているところも心にくいが、その鳥居の奥下手に、三人ずつ左右二側に居並んでいる従者がある。 同じ人物でありながら、この三人ずつの一組は、鳥居の外から中央に至り、さては上手・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・ ―――――――――――― 閭は衣服を改め輿に乗って、台州の官舍を出た。従者が数十人ある。 時は冬の初めで、霜が少し降っている。椒江の支流で、始豊渓という川の左岸を迂回しつつ北へ進んで行く。初め陰っていた空がようよう・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
・・・「誰やらん見知らぬ武士が、ただ一人従者をもつれず、この家に申すことあるとて来ておじゃる。いかに呼び入れ候うか」「武士とや。打揃は」「道服に一腰ざし。むくつけい暴男で……戦争を経つろう疵を負うて……」「聞くも忌まわしい。この最・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・王侯や富者の家族においても、従者や奴隷の家族においても、その点は同じであった。 フロベニウスはそこに教養の均斉を見いだした。上下がこれほどそろって教養を持っているということは、北方の文明人の国にはどこにもない。 が、この最後の「幸福・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫