・・・堅実に、堅実に、耐乏して生産復興と云われ、勤労者はその気で生きている傍で踊子たちが宝くじのぐるぐる廻るルーレットを的に矢を射ている。しかし、きょう勤労するすべての人に企業整備の大問題が迫っている。税の問題がある。 社会のこういう矛盾と撞・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・現在では、すべての封建的な意図が、その表現はかならず日本の民主化と復興のため、といういいまわしをもちはじめた。 最近あらわれた元看守のファシストである暗殺者さえ、属する団体は民主化同盟という名をもっている。もういっそう手のこんでいる政治・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
かなりの復興したとはいっても、東京の街々はまだ焼あとだらけである。大きい邸跡の廃墟に石の門ばかりのこって、半ばくずれたコンクリート塀の中に夏草がしげっている。小さい道をへだてて、バラックのトタン屋根が暑い日をてりかえし、ス・・・ 宮本百合子 「いまわれわれのしなければならないこと」
・・・などが世間の注目をひき、文章の古典復興物語調流行がきざしかけた頃、なにかの雑誌で、谷崎と志賀との文章を対比解剖し、二人の文章にあらわれている名詞、動詞の多少、形容詞、副詞の性質を分析し、志賀直哉を客観的描写の作家とし、谷崎潤一郎の最近書く物・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・丁度、一部の作家が文芸復興ということを唱え出し、而もそれには現実の根拠が薄いので一向実際の文学は復興しないというような時期、一種の刺戟として、決められた形であった。当時の文学のありようから、真の新進、精鋭は見出し難く、受賞の範囲は、それぞれ・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・折から、かつてはプロレタリア文学運動の主唱者の一人であった林房雄氏等から旺に文芸復興の叫びがあげられた。 この文芸復興の叫びには、プロレタリア文学の仕事に当時従っていた人々の中から呼応するものが現れたのみならず、ブルジョア文壇の数年来沈・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがある・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 文芸復興の運動はいろいろの意味で偶像破壊の運動だったに相違ない。しかし根本においてはそれは字義通りに古代の復興である。古代の内の不滅なるものを復興する事によって、新しい運動はその熱と力とを得たのである。 偶像は再興せられた。パウロ・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・ この復興の経過の間に自分を非常に驚かせたものが一つある。二、三年前の初夏、久しぶりに上京して東京駅から丸の内の高層建築街を抜けて濠側へ出たときであった。濠に面して新しい高層建築が建てそろっている。ここがあの荒れ果てた三菱が原であった時・・・ 和辻哲郎 「城」
・・・すなわち文芸復興期以後二十世紀まで続いて来た自然科学と国家組織との発達が、その極点に達して破裂してしまうのである。そうして旧来の自然科学的文化の代わりに理想主義的文化が、利己主義的国家の代わりに世界主義的国家が、力強く育ち始めるのである。・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫