・・・と云いつつ、ロマン・ロランその他の前もっての忠言にかかわらず、その小冊子を三ヵ月に百五十版重ねさせた。「政治的に利用してあるパンフレットの如きは一部一法二五。十部十二法。百部百法。五百部四五〇法。千部七五〇法というような割引率で、数万を頒布・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ しかし、作者としては、あくまでも初め自分がその作品によっていおうとしたことをどこまで云い遂せているかというところを動かぬかなめとして、賞讚も忠言をも摂取して行かなければなるまい。 私はこの夏、『中央公論』で森山啓氏の「プロレタ・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・ ジダーノフの堂々として正確な、心情に訴えるソヴェト作家への忠言は、わたしたち日本の作家からみれば、まだまだソヴェトの作家の独自性のよろこびと自覚とにたいして、ひかえめの注意しか喚起していないとさえ感じられるのである。ソヴェト作家が、ソ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ R氏の家は、丁度市街に沿うてある細長いモーニングサイド公園に近いので、夕食後三十分か一時間も緩くりと散歩し、胃も頭も爽かになった時分に帰って、読書と、昼間書いた草稿を夫人に読んで聞かせ、忠言を得て字句の改正をする。夫人は、同じ灯の下で・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・女が子を持てなければ去るべし、といいながら、女の妊娠期間への注意、分娩や育児への忠言は与えず、「古の法にも女子を産ば三日床の下に臥さしむと云えり」という風である。 益軒の時代は、さっき触れたような商人擡頭の時代であって、歌舞、音曲、芝居・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ただ、必要な場合の医療的処置としてうけ入れていたのであったが、昨今は急に産児を制限する範囲のことは賢い親の義務の一つであるとして、カソリックの坊さんまで、結婚しようとする若い男女の民衆に忠言するようになって来ている。アメリカでは家族の人員に・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・労働代表はM氏の語学と時に応じての忠言で援助された。自分一箇の利害は没却して日本における労働問題解決の縁の下の力持、社会へ奉仕するのが商人でなくなったM氏の理想である。 ロンドンにおれば、また相当来客がある。M氏程まだ充分イギリスを内臓・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・伊庭君の忠言は度々逢うので、座談のついでに聞いたのだが、杉君はわざわざ手紙で知らせてくれられた。それは第一部の閭門の外で、娘等に物を言い掛ける一老女である。アルテと書いてある。アルテはアイネ・アルテである。それを複数に誤って老人等と訳してあ・・・ 森鴎外 「不苦心談」
出典:青空文庫