・・・第四章がたいてい急テンポのロンドやソナタ形式のものになっている。そこで今試みに歌仙の一つを取って考えてみると、少なくも私だけの感じでは、形式的にも最初の表六句は一つの楽章を作り、次に裏の十二句が又一つの楽章、次に二の表の十二句が第三楽章、そ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・日本の独占資本家たちが、より強大な国際資本におんぶして大衆生活は二の次として生きのびる決心をしてから、それらの人々の近代化は急テンポにすすんだ。日本の港からあがって来た資本主義の独占的な本質にくっついて動くに必要な程度にまでいち早く自身の独・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・なぜならば、人間性をそのように畸型な傴僂にした権力は、よしんば急に崩壊したとしても、けっしてそれと同じ急テンポで、人間性に加えられた抑圧の痕跡、その傴僂は癒されないものとして残されているからである。それのみか、一年の時を経た昨今、彼らは呆然・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ ところが、文盲撲滅の文化運動は、社会主義社会に生きる勤労者からの自発的な要求で、急テンポに進んだ。 昔、地主に欅の枝の鞭でひっぱたかれた時分は、なるほど字を知らなくたってすんだだろう。富農だけが、金時計の鎖といっしょにポケットへ短・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ ソヴェト農村の社会主義的な集団化は、農民の現実を大きく変化させ、急テンポで農民作家の階級的認識を追い越しつつある。 五ヵ年計画は、農民作家に重大な任務を授けた。それは、昔の封建的で個人主義的農民気質と生活の型が、あらゆる農村生活の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ソヴェトの全生活は急テンポに社会主義社会に向って前進しているのに、バレーがその動きをまるっきり反映しないというのは妙だ。―― 勤労大衆だって思っていることは同じだった。だから、五ヵ年計画第二年めに新作バレー「蹴球選手」の上演が発表される・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・それほど日本における言論の抑圧は急テンポに進行していた。内務省警保局で検閲をしていた。その役人とジャーナリストたちとの定期会見の席で、あるジャーナリストから編輯上の判断に困るから内務省として執筆を希望しない作家、評論家を指名してくれといった・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・しかも、一方に、急テンポな近代資本主義化が進んでいて封建的にきりはなされ、格式だおれな心理になりがちな俳優たちの生活が、欧米式自由競争、契約の方法にきりかえられようとしている。そういう社会的な波瀾に対して、俳優の生活は、どんな一致した結集力・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・没落期に入ると一緒に、それは享楽的なブルジョア文化の消費者の猟奇癖をたんのうさせるために役立ち、急テンポに侵略的帝国主義のデクになり下りつつあるのだ。 群司次郎正という大衆作家がある。彼はよみ物提供の種をさがしに、異国情調、国際的背景を・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・等の筆者達は、福沢諭吉を新時代の大選手として、急テンポに欧化し、資本主義化しなければならなかった当時の日本の社会感情の先達となった。自由民権の云われた時代の作物が、今日なお面白く、或る気魄によって読ませるのは、筆者の全生活がかかる社会的現実・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫