・・・人を悩殺する媚がある。凡て盛りの短い生物には、生活に対する飢渇があるものだが、それをドリスは強く感じている。それが優しい、褐色の、余り大きいとさえ云いたいような、余りきらきらする潤いが有り過ぎるような目の中から耀いて見える。 無邪気な事・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ 手紙は私の留守にフダーヤが伊豆に出かけたこと、あまり愉快でなかったこと、特に宿屋の隣室に変な一組がいて悩殺されたことなどを知らした。彼女は、腕白小僧のような口調でそれ等の苦情をいっている。私は、彼女の顔つきを想像し、声に出ない眼尻の笑・・・ 宮本百合子 「この夏」
出典:青空文庫