・・・その上を、悼むように、吹雪の色と和して、ダイナマイトの煙が去りやらず、匍いまわっていた。が、やがて、小林と秋山とが倒れている川上の、捲上小屋の方へ、風に送られて流れて行った。が、上に上ると、それは吹雪と一緒になって飛んで行った。 発・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
長谷川時雨さんの御生涯を思うと、私たちは、やっぱり何よりも女性の多難な一生ということを考えずには居られなくて、最後までその道の上に居られた姿を、深く悼む心持です。 明治の濃い匂りの裡に成長して、大正、昭和と今日までの激・・・ 宮本百合子 「積極な一生」
・・・自分達の航海が無事に終ったにつけても、三等の人たちのその不幸を悼む自然の気持というものはないものだろうか。そのことについて、まるで知らなかったことのようにふれられていない。 船客の中には賀川豊彦氏も交っていて、この宗教家はアメリカなどで・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・ 不幸な若死をした自分を悼む涙であり、死なれた周囲に同情する悲しみである。 あれほど魂の安息所のようにも、麗わしい楽園のようにも思われた魅力は跡かたもなく消えて、今、死は明かに拒絶され、追放される。「死ぬのはこわい」という恐怖が・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
出典:青空文庫