・・・贋鼎だって、最初真鼎の持主の凝菴が歎服した位のものではあり、まして真鼎を目にしたことはない九如であるから、贋物と悟ろうようはない、すっかりその高雅妙巧の威に撲たれて終って、堪らない佳い物だと思い込んで惚れ惚れした。そこで無理やりに千金を押付・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・ 惚れ惚れと鴨居に届きそうに大きい息子の体を見てお節は歎息する様な口調で賞めた。 たまに見る息子は非常に利口に、手ばしこく、物分りがよく見えた。 ちょくちょく見舞いに来る者共に一々達の事を吹聴して、お世辞にも、「いい・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・そこの小家はいずれも惚れ惚れするような編み細工や彫刻で構成せられた芸術品であった。男は象眼のある刃や蛇皮を巻いたの鉄の武器、銅の武器を持たぬはなかった。びろうどや絹のような布は至る処で見受けられた。杯、笛、匙などは、どこで見ても、ヨーロッパ・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫