・・・PTAの物品交換会で、数十万円の禁制品が没収されたという新聞記事は、心ある親たちと教師に、どんな感銘を与えたろう。 二 日本の文化一般について、そもそもわたしたちはどんな現実的な観念をもっているだろうか。・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・併し、全体として、見物は、その大がかりな規模にふさわしい深い感銘を、観覧後まで心に与えられたであろうか。 自分としてはかなり物足りなかった。勿論、退屈な時、手当り次第に雑誌でも繙くように其場かぎりな、相手にも自分にも責任をもたない気分で・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・ 日頃カメラを愛する人々にとっては、今更ヴォルフも知れすぎた物語であろうけれど、番町書房というところから発行されているこの一冊の作品集は、いろいろな感銘で私をうごかした。 ヴォルフのカメラはまるで美感と温さとをもった生きもののようで・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・あれだけ深刻な戦争の現実の一端にふれ、国際的なひろがりの前で後進国日本の痛切な諸矛盾を目撃し、日に夜をつぐいたましい生命の浪費の渦中にあったとき、一つ二つ、あるいは事態そのものについて、一生忘られない感銘をうけたことがなかったとは、けっして・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
映画女優のあたまのよさが、一つの快適な美しさ、あるいは深い心と肉体の動きの感銘として作品のなかに十分活かされている場合をみると、大抵のとき、それは製作の方向、監督のみちびきかたと密接な関係をもっているように思える。したがっ・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
さきごろは「鉛筆詩抄」を頂きまことにありがとうございました。 この前、鉛筆の詩を拝見したときから、わたしに感銘されていた詩の精神が、ここに集められているすべての詩のなかにこもっています。日本にも、生活そのものの中から、・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・自分の学生時代に最も深い感銘を受けたものは、この講義と大塚先生の「最近文芸史」とである。大塚先生の講義はその熱烈な好学心をひしひしと我々の胸に感じさせ、我々の学問への熱情を知らず知らずに煽り立てるようなものであったが、それに対して岡倉先生の・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
・・・ただ我執の立場にとどまる旅行記からは、我々は何の感銘も受けることができない。脱我の立場において異境の風物が語られるとき、我々はしばしば驚異すべき観察に接する。人間を取り巻く植物、家、道具、衣服等々の細かな形態が、深い人生の表現としての巨大な・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
・・・それくらいであるから、後に『善の研究』としてまとめられたような思想を、いろいろ苦心して育てていられた時代の西田先生は、その講義によって相当に深い感銘を生徒に与えられたことと思われる。それを考えると、右にあげたような意見が四高の生徒の間に行な・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
・・・ 岸田君の論文集が自分に与えた感銘はこれだけにとどまらない。が、自分はただこの書を読者諸君に推薦し得たことに満足して筆を擱く。 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫