・・・同じ党派性、まがうかたなきプロレタリア性によって貪慾にかかる階級的実践の成果を芸術的概括にまで高め、発展せしめる努力がなされなければならない。組織活動と創作活動とはプロレタリア作家にとって二つの対立する作業ではなく、そのものにおいてきりはな・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
日本の新しい出発にとって意義深い総選挙は、四月十日に行われ、十五日までには全国の成果が知らされた。 前もって数えられていた全国の有権者は三千九百八万九百九十人といわれ、そのうち婦人有権者は二千九十一万七千五百九十三人と・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ ところが十四年前日本の軍力が東洋において第二次世界大戦という世界史的惨禍の発端を開くと同時に、反動の強権は日本における最も高い民主的文学の成果であるプロレタリア文学運動をすっかり窒息させた。そして、日本の旧い文学は、これまで自身の柱と・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・に讚歎するとき若い婦人たちはそれぞれの主人公たちの伝奇的な面へロマンティックな感傷をひきつけられ、科学というとどこまでも客観的で実証的な人間精神の努力そのものの歴史的な成果への評価と混同するような結果をも生むのである。 婦人の文化の素質・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ローレンスの反抗は、フランスの自然主義の初期、その先駆者ゾラなどが、近代科学の成果、その発見を文学にうけ入れるべきだとして、科学書からの抜萃をそのまま小説へはめこんだ、その試みの精神と通じるところがある。 ローレンスは、一方でそのように・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ 芸術の成果と芸術家の日々の生き方の問題が切実にとりあげ直されても無駄ではないのでしょう。文学は常に、文章道の末枝へ墜落する危険を一方に目撃しつつ、一方にそれとたたかい、批判してゆく力を内部的に包含しています。音楽が風や濤声や木々の葉ず・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・ 寧ろ、現代の資本主義が強く文化分野を支配するようになってから、その取引場としてパリ、ロンドン、ニューヨークという風な首都が、文化・芸術の成果を集中しはじめた。文化・芸術の結実は、そのものとして人民に愛され、貴ばれる本質から変化させられ・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・だから半世紀の間にキリシタンの宣教師たちのやった仕事は、実際おどろくべき成果をおさめたのである。 しかし文化的でない、別の理由から出た鎖国政策は、ヒステリックな迫害によって、この時代に日本人の受けたヨーロッパ文化の影響を徹底的に洗い落と・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・あらゆる発明と発達とはその成果を戦場に並べ立て、あらゆる個々の進歩はその戦争への貢献によって一時に我々の注意を刺激する。戦前の十年もついに戦争中の一年に如かない。 このことはおそらく狂気じみたいら立たしさ――持続の意力をほとんど完全に欠・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・水野精一君たちの精密な実地踏査が始まったのもそのころで、その成果『雲岡石窟』十五巻の刊行が終わったのは、つい数年前のことである。これで雲岡遣蹟の紹介の仕事は完成したといってよいが、しかしそれは伊東博士が撮影して来られてから、半世紀たってのこ・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫