・・・階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。 ――そうだ。特に五ヵ年計画の三年目になってる現在では、国内の問題でプロレタリアートが階級的に揺ぐ点なんか在りようない状態だ。が、忘れるな。プロレタリア・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・戦時利得税をいずれ払わなくてはならず、しかも、大財閥に対してのように、政府が様々の法式を考案して、とり上げた金をまた元に戻してよこしてくれる当もない。戦時成金ばかりが、昨今、使ってしまえという性質の金銭をちらしているのである。 つい先頃・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
私の生活も随分夥しい或は根本的な変化をうけていますが、それはおそらく、この四年の間に成金になりもしなかった大多数の国民が、その日々で経て来ている、その変りかただと思います。事の端々では、いろいろ特別な点もあるわけですが、し・・・ 宮本百合子 「生活的共感と文学」
・・・ 彼女が active に家のことをせず、成金くさくなって居るのは、憐れなふてくされ、と云えよう。 情があって、頭のない女のあわれさ。 ――○―― 中江さんの場合、 彼女の快活そうな様子はどこから来るか・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・皇太子が、唯一の御馳走は、カレーライスだと思っているということについて、人々は小生意気で早熟な闇成金の息子たちに対するのとはちがった、ほほ笑みをもらすのである。皇后が動物園へ行って、おもしろそうに笑って象を見ている、その姿に、世間を知らない・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・しかし、同じ戦敗のドイツの中でも、そしてあの世界史的なドイツのインフレーションの中でも、第一次大戦によって軍需成金となった新興財閥は存在した。それら一握りの新マーク階級の人々は彼等の特権にとって有利でない人民的な生産様式にドイツの社会が進化・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・そして、日本民族の運命を破滅させた戦争によって財を蓄え、社会的地位をのしあげた新興階級――漱石はこういう社会層を成金とよんだ――の子弟達が、人間となった天皇の子息とひとつ学校に入れるという親の感激によって、入学して来ているということ。学習院・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・船成金ができて、金のこはぜの足袋をはいたとさわがれたが、一般の人民生活は、それに便乗してせめても銀のこはぜの足袋でもはいただろうか。大正九年の大パニックで破産したのは郵船の株主ではなかった。米一升が五十銭を突破して米騒動がおこった。やっぱり・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・がおかれ、他の一端には「成金」がおかれていたことも、最も複雑な意味で当時の日本風俗の一断面を語っていると云えるのである。 今日の日本の諸風俗のありようというものは、つい先頃までは風俗描写の小説をもってリアリズムの文豪と称した一部の作家た・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・と、そこに営まれている社会の暗い恐るべく暴虐なツァーの封建的絶対制、その上に急に花咲き出した資本主義搾取の二重のおもしの下にあって苦しみ、人生を浪費する人民の悲劇を見つづけるロシアの作家たちは、植民地成金になった十九世紀から二十世紀初頭のイ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫