・・・信用出来もしない候補者に投票なんかしたくないと思って、良心的に棄権した場合もあったかもしれない。 しかし、四月十日にきめられている今度の選挙は、私たちに、どんな心もちを抱かせているだろうか。少くとも、これについて無関心ではいられないもの・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・日本の民衆が、永年の間逆宣伝によって現在でもどうやら恐ろしいもののように思いこまされている共産党をさけ、同時に従来の特権勢力の溜りである自由党もさけて、せめても、を心だのみに投票して政権を与えた日本社会党は、あのような醜状をさらして、どんな・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・その方々は、どういう思いで、今日を送り迎え、自分の投票を考えていらっしゃるでしょう。 私たちは、今日の日本の立て直しと、自分たちの生活改善の実際の必要に立って、その立場から政党を選んでゆくのが、一番正しいと知っております。 例えば、・・・ 宮本百合子 「幸福のために」
・・・ 一年間の最も雄弁な教訓は、これ等の婦人代議士が女は女の生活をよく知っているということを、選挙演説の中心においてたたかい、婦人有権者も女は女へと思って、そこに希望をかけて投票したことが、まったく無意味であったということです。 婦人代・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・しんからの感興と情熱とを動かされる瞬間のうちには、何かの意味で今日の歴史の命がこもっているわけだが、例えば最近或る文学賞の候補に一つの小説がのぼって、多数の投票があったが、それは生々しいテーマで当選してもその雑誌に発表されないからというのが・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・ ところが、この金襴の帆を順風に孕ませた宝船、文芸懇話会というものの文学に対する性質の矛盾は、この一九三五年七月、文芸懇話会賞が与えられた直後、授賞者決定に当って審査員の投票では島木健作氏が選に入っていたにもかかわらず、公表されない特別・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・いることはいても、投票のようなことの結果ああいう日本として自慢にならないようなことになるという事情があるのだろうか。科学が科学としての評価に立ち得ないということは文化の悲惨であると思う。 昔アインシュタインが日本へ来たとき、民衆の歓迎ぶ・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・智能の低い、考え判断する能力を与えられていない人民の多数が、自分たちの貧困を克服するために、組織的に行動するよりもアナーキーに陥り、選挙権をもっていてもどういう政党に投票してよいか分別もつかないで、資本主義の搾取というものに疑問をもたない人・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ドイツが第一次大戦終結の後一九一九年ヴェルサイユ条約成立と年を同じくして、新憲法による男女二十歳以上の一般、平等、直接、無記名投票権を認めていること、および、ソヴェト・ロシアが一九一七年十一月以来生産的公益的労働によって生計を営む十八歳以上・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・その同じ人々が、三十五倍の都民税をはらう義務は遂行し、所得を実質的には1/3にしてしまう所得税をはらい、言論抑圧に等しい紙不足に服し、あれこれの投票をして社会生活をしていることについて我から怪しまないのはふしぎである。現に自分が屈伏しつつあ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫