・・・文学のうまれる母胎としての社会の階層・階級を、勤労するより多数の人々の群のうちに見いだし、社会の発展の現実の推進力をそれらの勤労階級が掌握しているとおり、未来の文化発展も、そこに大きい決定的な可能として潜在していることを理解したのであった。・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・頭を誰れでも何処へでも持ち廻るという趣味はおかしなことに理解されて来るでしょう、着物とか髪形とか云うものは随分その人の人柄を細く照返しているから、女の人が自身からそれを自覚し自分の表現としておしゃれを掌握するようになることが大切だし、その中・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・そして、現実の食糧管理に当るときには、食糧供出、配給、その他必要な機構に関係をもつ行政権を、この委員会として掌握しなければならない。板橋の場合、発見した隠匿物資は、配給所がごまかしていたものではなかったのだから、委員会は、先ず連合軍に申し出・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・大抵の才能ならば、その白熱と混沌との中で萎えてしまいそうなところを、踏みこたえ、掌握し、ときほぐし、描写しとおしたところに、この巨大で強壮な精神の価値がある。文学史上の一つの定説となっているバルザックの情熱の追求、――悪徳も亦情熱の権化とし・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・別の言葉でいうと、作者は、作者にとって身近な女主人公の生活を、客観的にひろい社会性の繋りにおいて観て、その喜憂と努力と苦悩とを芸術の中に掌握し活写することを得なかった。作者は、困難な課題をふくんだ生活の部分をその実際生活と作品の構成からどこ・・・ 宮本百合子 「二つの場合」
・・・ 外国暮しの或る日、激しく全世界の動きというものを身辺に感じ、何か立ちどころに、世界を掌握したような国際小説が書けそうな、少くとも書いて見たい衝動を感じたことがありはしないか。ブルジョア作家でも恐らくそうだろう。まして確然とした世界観を・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・ 主権在民ということは、最少限に考えて、人民自身が、行政、司法、立法の全権を有すという意味であろうし、議会の権能も、当然人民の内から選ばれた代表――議員によって掌握されなければならないものだろう。 この草案の発表された三月七日の新聞・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・阪商人の富は、封建領主達が領地の農民から取立てていた米を廻漕し、その収穫と収穫との間に金銭の立替をして利をとりやがて集めた米を土台に相場をして、政治的には支配者であった武士の経済を本質的に大坂の商人が掌握しはじめたことで増大して行った。・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫