・・・ 今度、放火したり、爆薬を投げたりしたものの中の大多数は日本人の社会主義者だと云う話がある。真ギはわからないが、若し日本の社会主義者が本所深川のように、逃場もないところの細民を、あれほど多数殺し家をやき、結局、軍備の有難さを思わせるよう・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・科学の発達が、益々大規模な戦争を可能にし、大規模になるということは益々罪のない穏和な人民の大量を殺戮することである事実に、深刻な現世紀の人類的悲劇を見るのは、戦争放火者たち以外のすべてのまともな人々の心情である。だからこそ世界の良心的な科学・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・ けれども、徳川の封建的権力がくずれかかった幕末に、日本中に横行した悪浪人の暴状と、相互的な暗殺、放火、略奪に疲れていた町人、百姓、即ちおとなしい人民階級は、ともかく全国的に統一した政権の確立したことに安心した。士族の町人、百姓に対する・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・その土地の富農たちの恐ろしい悪計によって、革命的であった農民イゾートはヴォルガ河のボートの中で頭をわられて殺され、ゴーリキイたちの店は放火され、そのどさくさにゴーリキイやロマーシももうすこしのところで殺されかけた。流刑地でのいろいろの危急の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・第二次世界大戦はこういう手順でナチスによって放火された。 その前後のことだった。わたしは、たぶん『新女苑』であったかに、一人のフランス女学生の手記がのっているのを読んだ。いま、その名を思い出すことのできない若いソルボンヌ大学の女学生は、・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫