・・・政治の上にも、宗教の上にも、その他人間生活のすべての諸相の上にかかる普遍的な要素は、多いか少ないかの程度において存在している。それを私は無視しているものではない。それはあまりに明白な事実であるがゆえに、問題にしなかっただけのことだ。 私・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・もよい、修養を持って始めて味い得べき芸術ならば何でもよい、只其名目を弄んで精神を味ねば駄目と云う迄である、予が殊に茶の湯を挙たのは、茶の湯が善美な歴史を持って居るのと、生活に直接で家庭的で、人間に尤も普遍的な食事を基礎として居る点が、最も社・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・これ等の統一的な芸術にあっては、はじめより、大衆に共通する趣味、興味、感情、思想等を標準とし、普遍性を指標とするを特色とする。勿論その中には、郷土的色彩のあるものもあるけれど、要するにそれ等の認識、発見に目的があるのでなくして、一般の娯楽に・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・ すべて、芸術といわれるものが、良心の結晶であるかぎり、かくのごとき普遍性を有するものである。そして、それを感ずる人は、又かくのごとき自由性に、置かれている。与うるにも、受けるにも、そこに何等の条件と理論とを必要としないのである。 ・・・ 小川未明 「名もなき草」
・・・ かかる普遍的に妥当なる道徳的真理が存在するか否かがすでに根本的な問題である。たとえば唯物史観的な倫理学は一定の生産関係、ある階級に妥当なる道徳のほかは認めないであろう。また種々に道徳を比較し、分析し、記述することを任務とするという倫理・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・彼は普遍妥当の真理を超時間的に、いつの時代にも一様にあてはまるように説くことでは満足しなかった。彼の思想はある時代、ことに彼が生きている時代へのエンファシスを帯びていた。すなわち彼は歴史の真理を述べ伝えたかったのだ。 彼は釈迦の予言をみ・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
歌の口調がいいとか悪いとかいう事の標準が普遍的に定め得られるものかどうか、これは六かしい問題である。この標準は時により人により随分まちまちであってその中から何等かの方則といったようなものを抽き出すのは容易な事とは思われない・・・ 寺田寅彦 「歌の口調」
・・・ それで映画や連句のモンタージュが普遍的な効果を収めうるためには、作者が示そうとする「通路」が国道であり県道であることが必要である。そうでないときは作者の一人合点に陥って一般鑑賞者の理解を得ることは困難である。 映画と夢・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・この映画を見ながら、英雄崇拝は結局永久普遍に不可避的な人間界の事実だというような気がした。われわれが見るとムッソリニが閲兵式に臨んでいるニュース映画もこれと全く同格な現象のニュースとして実におもしろく見られるのである。 ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ただ普遍な適用性をもつ力学が無意識に合目的に応用されているだけであろうと思われる。「自然の設計」に機械的原理の応用されている一例としておもしろい見ものである。 ガラガラ蛇が横ばいをするのも奇妙である。普通の蛇ではこんな芸当はできないので・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
出典:青空文庫